参院選挙が終わったら、自民党は一気に「労働法制の緩和」「TPP(病院への株式会社本格参入、株式会社の農業参入)」に突き進む。
その「申し子」とも言えるのがワタミことわたなべ美樹候補(全国比例)だ。わたなべ候補は上記の3つを成功させ巨額の富を築いている。
ワタミ氏は本社そばのJR蒲田駅前で第一声をあげると、お年寄りの原宿と言われる巣鴨で得意の金儲け(黒字経営)を説いた。縁日の露店が並ぶ地蔵通り商店街は、大勢のお年寄りで賑わった。おじいちゃん、おばあちゃんがワタミ氏の演説に耳を傾けた。
「10年前大阪の赤字病院を任された。黒字にするために(儲けの薄い)高齢者に出て行ってもらった。そうして病院を立て直した」。ワタミ氏は居並ぶお年寄りを前に臆面もなく語ったのである。
ワタミ氏は、「出て行ってもらったお年寄りが心配だった」としながら、「安くてサービスが良く、食事も旨い老人ホームを、と作ったのが『ワタミの介護』だった」と宣伝を忘れなかった。
病院から高齢者を追い出して老人介護施設に収容する―ワタミ氏はお年寄りをターゲットにしたビジネスモデルを確立したのである。
ワタミグループのひとつ、ワタミの介護(株)は平成4年に設立された比較的新しい会社だ。同社はデイサービスや通所介護事業所のほか、全国94箇所で介護付き有料老人ホーム「レストヴィラ」を運営、6500人を収容している。
「ワタミの介護」をめぐっては幾つものトラブルが指摘されている。その代表的な例が、神奈川県川崎市で起きた事故だ――
「レストヴィラ元住吉」に入所していた男性の床ずれが悪化し、敗血症で死亡した。男性の容態が急変する直前に行われた家族とワタミ側との話し合いで、渡邊氏が「一億欲しいのか」と言い放ったと、週間文春が6月12日付けで伝えている。
この男性が死亡後、遺族は提訴した。昨年3月24日付け読売新聞によれば、遺族が6750万円の損害賠償を求めて争った裁判の判決で横浜地裁はワタミ側に約2160万円を支払うよう命じた。
ワタミ氏の立候補には反発が根強い。娘を過労死させられた遺族が自民党に「公認取り消し」を求めて抗議に訪れたのは典型的な例だ。さまざまなトラブルから見ても良心的な経営者とは言い難い。
だが自民党は業界を総動員するなどし、ワタミ候補の当選に全力をあげるだろう。株主の利益を最優先し、人の命は二の次にする社会がポッカリと口を開けて待っているようだ。