独裁政権に反対する集会と行進が続くトルコと、「在日コリアン」へのヘイトスピーチがまき散らされる日本。飛行機で11時間ほど飛んだ国のデモと、この国のそれは「デモ」という同じ言葉でくくれないほど異質なものだった。
6月30日、レイシストたちはいつものように大久保公園を集合場所とした。ヘイトデモに反対する市民が大挙待ち構え、封じ込めを図った。嵐のような「帰れコール」が響くなか彼らは機動隊に守られ入場、機動隊に守られ出発した。
レイシストはわずか100人余り。カウンターの市民は沿道を埋め尽くすほどだった。500人は下らないはずだ。機動隊がいなければ、数の力でレイシストは粉砕されていただろう。
弁護士グループが告訴したこともあり、警察は大久保通りの通過を認めなかった。レイシストたちのデモ隊は靖国通りを通ることに。買い物客などで賑わう日曜日、歌舞伎町のそばを通るのである。
デモ隊の後をカウンターの市民が追う。両者を激突させないように機動隊は歩道を40~50mごとに塞いだ。カウンターとは全く関係のない道行く人まで機動隊から「通せんぼ」されるのである。「何があったんだ?」鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする人が相次いだ。
コース変更を強いられたとはいえ、レイシストたちは機動隊に守られて“思い”を遂げることができた。それも日曜日の歌舞伎町をかすめる形で。レイシストに対する機動隊員の対応は実に紳士的だった。柔剣道の猛者が「早くお進みください」などと言うのである。
国家権力に守られて意思表示できるのが日本だとすれば、トルコはその真逆だ。首相の辞任を求めて広場に集まっただけでも、警察から催涙弾を撃ち込まれ、催涙性の液体を浴びせられるのだ。人々はそれでも主張を曲げず機動隊に立ち向かう。それも丸腰で。命を懸けての意思表示だ。
権力を後ろ盾にし、立場の弱いマイノリティーに究極の罵詈雑言を浴びせる。これほど楽なデモはないだろう。人間としても最低の部類だ。安倍首相のいう「美しい国」の醜い姿である。
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