広場のオキュパイが始まって12日目、警察が虚を突いて動いた。
「ムスタファ・ケマル・イジンデイズ=アタチュルク、あなたの後をついて行きます」。土日やアフターファイブともなれば、ありとあらゆる層がタクシム広場に集まり、建国の父アタチュルクを慕うシュプレヒコールをあげていた。
火曜日の朝、広場に詰めているのは学校が休みの学生がほとんどだ。「治安維持のため過激派を追い出した」。武力鎮圧の名目が立つような状態のなか、警察は広場を急襲したのである。
地元英字紙「ヒュリエット」によると、警察は急襲の直後、弁護士50人を法曹施設で拘束した。用意周到だ。エルドアン政権と綿密に打ち合わせていることがうかがえる。
広場にはアタチュルクの銅像もある。警察はここに催涙弾を打ち込み、催涙性の薬品が混じった液体を放水した。催涙弾の製造会社はエルドアン首相のファミリー企業といわれている。
オキュパイの引き金を引いた公園の再開発も建設に携わるのはやはりファミリー企業だ。再開発計画の中には「アタチュルク文化センター」も含まれている。利権のためにトルコの英雄さえ踏みにじろうとしたことが、国民の怒りに火を注いだ。
エルドアン首相はトルコ近代化の礎となった政教分離を否定し、イスラム化を進める。国民は飲酒も公の場での愛情表現も可能な世俗主義に慣れ親しんでいる。
まだオキュパイが続いていた頃、ゲジ公園でビールを飲んでいた青年が次のように話した―
「これ(夜間の酒類販売禁止法)がタイイップ(エルドアン首相)の第一歩だ。彼は自分がオスマン時代のスルタンになったつもりなのだろう。個人の生き方まで束縛する彼の独裁政治に怒りが爆発したんだ」。
力でねじ伏せても政治や社会は安定しない。溜ったままの怒りのマグマは、いずれまた爆発するだろう。
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