コリアタウンの新大久保や鶴橋で聞くに堪えない民族差別発言を撒き散らすヘイトデモ。世界中で報道され日本の恥となっているのだが、政府の対応は鈍い。
それを象徴しているのが国会だ。きょう参院法務委員会で有田芳生議員(民主)が、「ヘイトデモ問題」を追及することになっていたのだが、自民党議員が多数欠席したことから流会となった。
いっぽう、夕方参院会館で開かれた「民族差別・排外主義に抗議する院内集会」は、約250人の市民が参加して満席となった。
集会では、大阪経済法科大学客員研究員の師岡康子さんが、日本は「人種差別撤廃条約」に加盟していながら、具体的な条項は履行していないことを指摘した。
人種差別撤廃条約の第2条は「締約国は人種差別を批判し、あらゆる形態の人種差別を撤廃し、すべての人種間の理解を促進する政策を、すべての適当な方法により遅滞なく遂行する義務を負う」と定める。
これを具体的に規定するのが第4条のb項だ。同項は「人種差別を助長し、かつ扇動する団体や宣伝活動が違法であることを宣言し、禁止し、こうした団体や活動への参加が法律で処罰すべきものであることを認める」と規定する。
新大久保や鶴橋で繰り広げられるヘイトデモは、まさしく人種差別撤廃条約違反なのである。しかし日本政府が国内法の整備を怠っているため、事実上の野放し状態となっている。
ヘイトデモを規制する法律を新たに作ると、警察の運用しだいで言論の自由も取り締まりの対象となる― 穿ったような見方があるが、杞憂というものだ。人種差別撤廃条約に基づいた国内法を言論弾圧に使った国の名を聞いたことがない。
行政の対応のお粗末さを指摘するのは、一橋大学の田中宏名誉教授だ――
「安倍政権が朝鮮学校を無償化の対象にしない。猪瀬都知事が27ある外国人学校のうち10校の朝鮮学校に補助金を出さない。これが、問題となっているような(在特会の)活動を応援している、激励していることになる。公の機関が率先してやっているのが、最近の動きだ。それに彼らが激励されている」。
安倍首相はきょうの参院予算委員会で野党議員の質問に対して「極めて残念だ」と答弁し、在特会のヘイトデモを批判した。
韓国、北朝鮮や中国に対して強硬な姿勢をとる安倍首相の登場で、彼らが勢いづいていることも事実なのだが。