東京都知事選挙は原発推進候補と脱原発候補との一騎打ちになることが改めて分かった。今月29日告示、来月16日投票の都知事選挙に立候補を表明している猪瀬直樹、宇都宮けんじ、ドクター中松、松沢弘文の4氏が25日夕、麹町のスタジオで討論会を開いた。
マスコミが本命視する猪瀬副知事は、東電改革の旗頭であるかのように伝えられているが、そうではなかった。猪瀬氏は冒頭の自己紹介で「東電改革に取り組んできた」と述べた。筆者は腑に落ちないため質問した。
田中:(都は東電の大株主であるのにもかかわらず)猪瀬副知事は、なぜ6月の東電株主総会で議決権を行使することなく途中退席したのか?
猪瀬:株主というのは議決権にかかわる関わる株の数を持っていないと直接影響力を行使するのは難しい。そこで、まず情報公開を迫り、有価証券報告書に書いてある子会社の数を調べた。調べたら168社あった。そのプロセスを1月からやってきた。プロセスの中で、東電に社外取締役を入れるところまでいって決着した。
田中:で子会社は減ったんですか?
猪瀬:資産売却リストの中に東電病院がなかった。その理由は福島に医療支援に行っているからということだった……(後略)
田中:東電病院は核心ではないんです。東電の最大の不良債権は原発なんです。なぜ原発を廃炉にすると言えないのか?
猪瀬:福島原発は廃炉にするんでしょ?
田中:福島原発ではありません。柏崎刈羽原発です。
猪瀬:まず、この電気が止まらないようにするためにはどうしたらいいかという方策をやっているんです。福島から900万キロワットの電気が来なくなった。東京湾にある35年から40年モノの老朽火力発電所がフル稼働しているんですが、ちょっとでも壊れたらブラックアウトになるので、リプレースすることをやっているんです。産業界やひいては世界に安定供給ができません。
福島の廃炉は40年かかるんです。これはきまっているんです。工程表を作って、40年たったものから廃炉にしていく。その間に廃炉技術を磨いて、世界の400-500ある廃炉市場を日本が獲得することを目標にするくらいにやっていく。
田中:福島原発ではありません。柏崎刈羽原発です。(猪瀬氏は柏崎刈羽原発を、すでに廃炉が決まっている福島原発にすり替えようとした)。猪瀬さんの言っていることは米倉さんや民主党の「なんちゃって脱原発」と同じことがわかりました。
猪瀬:同じではありませんよ。
猪瀬副知事が本音を出すのは、それから間もなくだった。フリーランスの大川豊(大川興業総裁)氏が「東京をどんな都市にしたいか?」と質問すると、猪瀬氏は「電気の輝きを維持しなければいけない」と答えたのだった。
宇都宮氏は「住んで良かったと思える街。高い建物(高層ビル)があっても路上生活者がたくさんいるような街は幸せじゃない」。
猪瀬氏はさすが石原前知事の後継者らしく開発に重きを置き、強者の論理を振りかざす。
貧困問題に長年取り組んできた宇都宮氏は、開発よりも生活していくことが大事、と説いた。