まだこんな非常識なことが罷り通っているのか、と呆れる。記者クラブメディアによる席のひとり占めである。「名刺」や「社名の入ったメモ帳」を座席に撒いて、自社以外の記者が座れないようにするのだ。
昨日、参院会館で開かれた国会事故調の報道席で、この醜悪な光景が見られた。読売新聞の記者が「社名付きのメモ帳」(写真上段)などを7席に置き、菅直人参考人の顔が最も良く見える一角を独占していたのだ。
筆者と自由報道協会代表の上杉隆は“実行犯”の記者をつかまえて抗議した。「ルール違反ではないか?」と。記者クラブ主催の会見ならいざ知らず、一般の傍聴もできる公開の委員会である。
読売の記者(写真下段)は悪びれもせずに「各社やってますからね」とニヤニヤしながら答えるのだった。
席取りは記者クラブの特権だ。フリーランスをはじめ記者クラブ以外のジャーナリストは、受付け開始時刻まではゲートの外で待たねばならない。
だが、記者クラブはオールマイティーとも言える国会記者証で、いつでも入館できる。先に行った若手記者やアルバイトに「名刺」や「社名付きメモ帳」を置かせ、先輩記者様ご一行は、催しが始まる直前にお出ましだ。
「正直者が馬鹿を見るではないか?」。筆者は再び読売の記者に詰め寄った。記者は「各社やってますからね」を繰り返した。不遜な笑みは浮かべ放しだった。世間の常識に照らし合わせて恥ずかしいことをしている、との思いはないのだろう。
最近やっとクラブメディアの記者が名刺を交換してくれるようになった。かつてはフリーランスが名刺を出しても、彼らは「いやあ、今ちょっと名刺を切らしていまして」と言って名刺をくれなかったものだ。ところが、席取りになったら、湧いたように名刺が出てくる。
どの会場であろうが、座席数は限られている。にも拘わらず彼らはどこに行っても「席取り」をする。早くから並んだ人が、立ち見の憂き目を見る。まさに「世間の常識は記者クラブの非常識、世間の非常識は記者クラブの常識」である。
曲りなりにも社会正義を説く新聞記者がすることだろうか?
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