近畿地方1,400万人の水ガメびわ湖。過去にも富栄養化による赤潮が発生するなどして関西住民を悩ませたことがある。
近江っ子が“うみ”と呼び、生活と共にあった水ガメの環境はこれまでになく脅かされている。野田政権が政治日程に乗せたことにより、大飯原発の再稼働が目前に迫っているからだ。
湖国の都、大津市は大飯原発から60キロ圏内にある。湖北地方は福井県境と言っても過言ではない。もし原発事故が起きれば、びわ湖は瞬く間に放射能で汚染される。
「エライコッチャ」。危機感を募らせた市民が8日、近畿一円からびわ湖岸に集まり、関西電力に向けて抗議のデモ行進をした。滋賀県栗東町在住の会社員、ハンドルネーム「abuさん」がTwitterで呼びかけた。
青地に白で「びわ湖をまもろう」と書いた横断幕を持ち先頭を歩いている女性(学生=写真・左)は京都で生まれ育った。祖父母はずっと滋賀県に住んだ。「びわ湖は生まれた時から当たり前のものとしてあった。びわ湖が穢されるのは許せない。それも放射能によって」。女性は愛くるしい顔を険しくさせた。
米原市から駆け付けた農園経営者(ハンドルネーム「lipton」さん)もいた。トマト、パプリカ、ナス、ピーマンを栽培している。「大飯原発が事故を起こしたら全滅だ」。liptonさんは眉間にしわを寄せた。若狭湾からの北西の風は伊吹山にぶつかり米原から関ヶ原一帯に流れ込むのだ。地域の農作物は放射能でひとたまりもないだろう。
デモ隊の一行が関西電力滋賀支店に差し掛かるとシュプレヒコールの声が一段と大きくなった。「びわ湖を守れ」「魚を食べたい」…
多くの脱原発デモを取材してきたが、これほど生活感に溢れ危機感が漂うデモは見たことがない。
福島出身のバンドが大阪公演に向かう途中立ち寄り、参加者たちにエールを送った。メンバーの一人は「再稼働は絶対反対。原発はもうこりごりです」と怒りを吐き出すように語った。原発事故は常に「明日は我が身」とも言える。
◇
『田中龍作ジャーナル』は読者の支援金によって維持されています。