大飯原発再稼働に向けた野田政権の加速が止まらない。5日は、原発の「新安全基準」を4閣僚会議で了承した。全電源喪失とならないような防止対策をすでに講じていることが基準だ。だがベントフィルターの設置や防潮堤の建設など完成が数年先となるものは事業計画だけでも可としている。先送りである。
福井県の西川一誠知事が2月定例議会で「国は暫定安全基準を示してほしい」と述べたことを受けた措置だが、付け焼刃も甚だしい。「新安全基準」は、なりふり構わず再稼働に突き進む野田政権の危険な所産だ。
翌6日、枝野幸男経産相の記者会見で筆者(諏訪)は質した。「ここ数日、実に早いペースで4閣僚会議が開かれたり、“新安全基準”が打ち出されたりしている。5月5日に北電泊原発が止まると原発がゼロになるので、それを避けるために再稼働を急いでいるのではないか」と。
枝野大臣は「それはありません」と言下に否定した。だが記者会見での発言を聞く限り、再稼働に向けた道筋が敷かれているように思えて仕方がなかった。
何より福井県訪問が決まっていることだ。枝野氏は「福井県知事から具体的に要請があり…」と明らかにした。「原発に近い地域は万が一の場合影響が大きい。こうした地域の皆さんにはより丁寧な説明が必要」と福井訪問の理由を述べた。
枝野氏は国会で「地元も含めた国民の同意が必要」と述べていたが、それも後退した。クラブ詰記者が「首長が再稼働はダメと言ったら、どうするのか?」と質問したのに対して「機械的には判断できない」とかわしたのである。
ますます怪しくなったのはフリー記者の次の質問に対する大臣の答えだ。フリー記者「(原子力安全委員会の)班目委員長が“2次評価も受けるべきだ”と述べているが…」
大臣「班目委員長は“2次評価を再稼働に先立ってやってくれ”とは言ってない」。
原子力村の一角を担うマスコミでさえ、班目委員長の発言は再稼働に慎重であるとの趣旨で報道している。にもかかわらず枝野大臣はそれを否定したのである。
筆者はいつものごとくダメ押しの質問をした―
「政治家と保安院をはじめとする専門家が責任をなすりつけあっている隙に原発が再稼働するのではないか、との懸念があるが…」
枝野氏は「安全性について判断を下すのは専門家。(再稼働までの)プロセスについて判断するのが政治家」ときっぱり答えた。再稼働は政治判断で決まるのである。「消費税」「陸山会事件判決」など政局も絡んでくるため、迷走もあり得ることを覚悟しなければならない。
(文・諏訪 京 / 田中龍作)
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