原発再稼働の前提となるストレステスト。2次評価の提出期限とされていた昨年末を2か月以上過ぎても、電力各社は1社たりとも提出していない。「デタラメ班目」委員長率いる原子力安全委員会でさえ「ストレステストは1次評価だけでは不十分、詳細な判断結果も踏まえた2次評価も必要だ」との見解を示しているにもかかわらずだ。
8日、原子力安全・保安院の定例ブリーフィングで、記者団から森山善範審議官に、「電力各社に対して2次評価を提出させるつもりはないのか?」との質問が飛んだ。
森山審議官は「検討中」と官僚答弁で交わそうとした。
記者クラブならいざ知らず、筆者はこのような答弁を見過ごすわけにはいかなかった。保安院と電力会社がズブズブの関係だったから、福島原発の大事故が起きたのではないか。
2次評価は炉心溶融に至るまでの過程を明らかにし、脆弱な点を改善する作業だ。今回のような大惨事を2度と起こさないために欠かすことはできない。保安院の学習効果のなさには怒りさえ覚えた。
「子供が夏休みの宿題を11月になってもまだ提出していないのと同じ。それを『検討中』というのは、規制官庁として姿勢を問われるが…」。筆者は追及した。
それでも森山審議官は「検討中」と重ねて答えた。
その後、フリーランスの木野龍逸記者が「2次評価の提出が遅れている理由を電力各社に聞いているのか?」と質問した。
森山審議官の答えに筆者は腰を抜かしそうになった。審議官はこともあろうに「1次評価で忙しいから」と答えたのである。オイオイ、提出期限をとっくに過ぎているにもかかわらず夏休みの宿題を提出していない生徒に対して、先生が「君は春休みの宿題で忙しいんだもんね。いいよ」と言っているのと同じではないか。
教師失格である。大甘の教育姿勢が、ルールを守れない生徒を育ててしまった。やがて生徒は日本中、近隣諸国にも迷惑をかける大事故を起こした。
電力各社は3月一杯で保安院が規制庁に移ることを見越してサボタージュしているのだ。それを知っていながら見過ごす保安院からは、400人余りが規制庁に移り、最大勢力となる。電力会社に大甘の姿勢を改めない限り、福島の惨事は繰り返される。
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