なだらかな稜線を描く山が幾重にも連なり、谷を小川が流れる。日本一美しい村と謳われた福島県飯舘村。東電福島第一原発の放射能漏れ事故により村の景色は一変した。
例年10月上旬ともなれば、たわわに実った稲穂が黄金色の絨毯を敷き詰めたように一面に連なっていた。政府により作付けを禁止された今年はご覧(写真・下段)の通りだ。「この春までは水田だった」と言われても俄かに信じることはできない。
作付け禁止の理由は、主に土壌からセシウムが検出されたからだ。先月末、更なる不幸が襲う。「村の北西部でプルトニウムが検出された」と文科省が発表したのである。プルトニウムは半減期2万4,000年、人類が作り出した最悪の猛毒と言われる。体内に採り込まれれば発ガンの危険性が高い。
事故発生後間もない頃から「プルトニウムも飛来しているはず」と指摘する識者もいた。だが御用学者は「プルトニウムは比重が重いので遠くまで飛散しない」と一蹴。
Mox燃料を使っていた3号機が爆発したのだから飛散すると考えるのが妥当だ。だが、政府もマスコミも御用学者の説に追随した。60日以上経って、メルトダウンを認めたのと酷似している。
政府と東電の情報隠しは改善の兆しさえ見えない。猛毒プルトニウムが検出された場所は、当事者である村(役場)にも明らかにされていないのだ。発表によれば採取した時期は6月~8月の間とされている。村の男性(農業・40代)は「もっと早く分かっていたのではないか」と不信感を隠さない。
文科省は「プルトニウムの濃度は低く、被曝量は非常に小さい」としている。数か月後、「濃度は高く、被曝量も多かった」などとするスクープ記事が出たりはしないだろうか。