「朝青龍事件」~タニマチある限り再発する

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不祥事が頻発する日本相撲協会。税制を優遇する国技に値するのだろうか(両国・国技館。写真=筆者撮影)

 ある宴席で女性キャスターが無邪気にも元関取に聞いた。「○○関はどうして横綱にならなかったんですか?」。元関取は間髪を入れず「お金がなかったからです、フフフ」。現金で星(勝ち)を取る八百長をたっぷりと匂わす返事だった。
 この以前にも元関取は筆者や友人のタレントに金をめぐって次のような話をしてくれた―「年寄り株を買うには億という金が要る。それにはタニマチと上手に付き合わなきゃいけない。タニマチから招かれる酒席をハシゴしてうまく金を稼ぐ。相撲は強くなかったけど、そうして親方になった人がいますからね」。
 タニマチには政財界人が多い。資力が必要とされるのだから当然だ。一般人に暴行を働き進退が問われている横綱朝青龍のタニマチには、島村宜伸・元農水相(09年衆院選で落選)がいたりする。
 タニマチともなれば自分のパーティーに有名力士を出席させる。雲をつくような体躯にマゲ姿の「お相撲さん」は、パーティーに華を添える。タニマチをつとめる政財界人は威厳を誇示できるというものだ。
 見返りとしてタニマチは角界の面倒を見る。それは資金面に限らない。
 日本相撲協会は税制面で優遇される財団法人だ。監督官庁は文部科学省。事と次第では財団法人の資格を剥奪することもできる。時津風部屋で親方と兄弟子が新弟子をリンチのあげく死に至らしめた事件(07年)の際は、「財団法人の資格を取り消すべし」との厳しい世論もあった。こうした事態にあって「穏便に穏便に」と動くのもまたタニマチを務める政治家の役目だ。
 政治家は警察にめったやたらと強い。電話一本で事件を揉み消す。一昨年夏、ロシア人力士による大麻吸引事件が起きた際、日本人力士や親方も吸引していると言われた。吸引器具がある親方の部屋から見つかったりしているのだ。だが立件はされなかった。
 世間の常識とは大きくかけ離れていてもやっていける相撲協会の閉鎖性。“保護者”として守ってきたのがタニマチだった。相撲協会理事に立候補している貴乃花親方は「タニマチ制度を止めて一般人も参加できるサポーター制度を導入して、相撲協会の近代化を図るべき」と主張する。時宜を得たものだ。
 相撲協会もなかなか狡猾である。横綱審議委員には必ずマスコミ界の大御所を加える。過去には渡辺恒夫(読売新聞社社主)、海老沢勝ニ(NHK元会長)らがいた。現在は鶴田卓彦(日経新聞元会長)だ。彼らを抱き込んでいれば、角界に不祥事が起きても報道を最小限に抑えることができる。もし週刊誌や夕刊紙がなかったら角界に絡んだ事件はいくつも闇に葬られてきただろう。
 もっと利点がある。マスコミ界の大御所は政治家に顔が利くことである。警察に圧力をかけて立件しないよう政治家に頼むことなど朝飯前だ。
 政治家、大メディア、相撲協会が癒着する閉鎖的な体質を抜本改善しない限り「朝青龍事件」はまた起きる。

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