派遣法を改悪するなどして大量の派遣労働者を切り捨ててきた前政権を選挙で倒した鳩山政権。全国136の自治体に協力を求めて、年末年始に住む所がない人たちに宿と食事を提供する「官製派遣村」を実施している。
昨年末、仕事も住居も失った労働者らが、厚労省のお膝元の日比谷公園で炊き出しとテントを求めて長蛇の列を作った「派遣村」の再現を防ぐためだ。
昨年の派遣村は日比谷公園までたどり着いて登録を済ませれば誰でも「入村」できた。職と住まいを喪失した人々に欠かせない「生活保護」「就業」「住宅」「医療」などについての相談コーナーもあり、人だかりができるほどだった。
今年の「官製派遣村」はどうだろう。東京都の例をとるならこうだ。ハローワークで求職登録を行い、受付票をもらう→東京都健康プラザ・ハイジアで手続き→バスで都の施設へ→1月4日朝まで宿と食事が提供される。
「官製派遣村」は飢えと寒さをしのぐことはできる。だが職も住居も失った人たちの生活再建については何のフォローもない。景気の冷え込みは凄まじく住居喪失者個人の努力だけでは、再就職など不可能であるにもかかわらずだ。
「これでは事態は改善されない」と危機感を抱いた法律家や労働組合員らが31日夕まで、新宿・大久保公園で相談に乗る。「元祖派遣村」の中核になった法律家や労働組合員らで作る「ワンストップの会」(代表:宇都宮健児弁護士)だ。専門家が「多重債務」「就業」「住宅」について相談に応じる。場合によっては生活保護申請も行う。
サービス業の正社員だったという男性(40歳)は秋口にリストラされた。会社が失業保険に入っていなかったため、解雇されてからは引越しや倉庫内作業などで日銭を稼いできた。住まいはネットカフェだった。年の瀬で仕事もなくなりネットカフェに泊まる金も尽きた。「就職や住まいの相談に乗ってもらいたいのでここに来た」と力なく話す。
総務省の調査(11月25日発表)によると完全失業者数は331万人と前年同月に比べ75万人増加した。労働者をとりまく状況は昨年より悪化しているのである。1月4日の朝まで食事と宿を提供するだけの「官製派遣村」では事態の改善には結びつかない。「元祖派遣村」のような「総合相談」が必要なのである。
政府と東京都は「官製派遣村」の場所さえ公表していない(渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターのようだが)。記者クラブメディアはそれに協力し、外観さえも写さない。ボランティア関係者は「政府による派遣村封じ込め以外の何ものでもない」と吐き捨てた。