閣僚経験者や知名度のある自民党参院議員の離党情報が夕刊紙などを賑わしている。取り沙汰されているのは防衛相、経済財政担当相を歴任した林芳正氏(山口)とTVタックルなどでおなじみの山本一太氏(群馬)。
離党者はまだ出そうだ。衆院選で歴史的惨敗を喫した自民党は、抜本的な再建策が打ち出せていない。自民党総裁選とその後の人事でも裏づけられた。まさに旧態依然。あいそを尽かしたように農協、歯科医師連盟、日本医師連盟など自民党の大集票マシーンだった業界団体が離反している。
政権与党の座から転落し国会議員が激減したため、陳情をつなげない地方組織はメロメロになりつつある。
個人レベルでの自民離れも深刻だ。どんな政党にするのか、全くビジョンが示されないため元来の保守層までもが自民党を見限っている。谷垣総裁の唱える「草の根の支持」は、現実認識を著しく欠くものだ。
改革派で鳴るある中堅議員(当選3回)は目も虚ろだ。親しいマスコミ関係者に「民主党に移りたい」と漏らしているという。総裁選でこの中堅議員と共に河野太郎氏を推した弁護士出身の参院議員も顔色を失っている。
河野氏は総裁選期間中、「『みんなの党』の渡辺喜美と連携する」とまで言って憚らなかった。森キロウ支配に公然と異を唱えた唯一の総裁候補が、自民党から片足外に出ているのだ。こんな政治家に党の再生を任せられるだろうか。自民党は人材が枯渇した、とも言える。
今月25日に投開票となる神奈川と静岡の参院補選でも、自民党は敗色濃厚だ。業界団体の自民党離れはさらに進むだろう。あと1年のうちに自民党が体制を立て直せるなどとは、谷垣総裁でさえ思っていないはずだ。
参院での民主党単独の現有勢力は109議席。これに13議席上積みすれば参院でも民主党の単独過半数となる。
「自らが所属する党に絶望している自民党参院議員を民主党に引き込む考えはないのか」、民主党本部で13日、開かれた定例記者会見で筆者は小沢幹事長に尋ねた。
「正々堂々と王道を行く」。いつもは仏頂面の小沢氏が破顔一笑して答えた。一本釣りという名の王道だろうか、と筆者は皮肉っぽく考えた。
小沢氏は細川・羽田連立政権時(93年8月~94年6月)に一本釣りで自民党の屋台骨を揺さぶった実績がある。当時と比べれば自民党の屋台骨は箸ほどに細っている。破顔一笑したのは、自民党壊滅が具体的に見えたからだろうか。
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