「精査に時間がかかっておりまして」「可及的速やかに」……。そつがないようで結局は何を言っているのかよく分からないのが官僚答弁だ。官僚政治の打破を掲げる民主党政権が間もなく発足するが、官僚答弁は変わるのだろうか?
11日、自公政権下では最後となる厚労省と派遣労働者のユニオンとの交渉が参院会館で持たれた。
悪名高きキャノン大分工場に悩まされる大分県のユニオンが厚労省を追及した――。キャノン大分工場が依然として偽装請負を続けている、と具体例を挙げて大分労働局に訴えた。ところがいつまで待っても労働局から音沙汰がないので問い合わせると「精査に時間がかかっている」との回答だった。
「派遣ユニオン」の関根秀一郎事務局長が、これを偽装請負といわず何を偽装請負と言うのか、と畳み掛けた。厚労省側は沈黙するばかりだった。
「どうなんですか?」とユニオン側が迫ると、厚労官僚の回答は「個別の問題にはお答えできない」。
『オイオイ、ちょっと待て。問題はすべて個別ではないのか?あんたが言うように一般論で片付くのなら裁判所なんて要らないじゃないか』。筆者は声をあげたくなるのを懸命におさえた。
連立政権の3党合意事項に「日雇い派遣、製造業への派遣を原則禁止」が盛り込まれた。産業界寄りだった自民党政権にあって厚労行政は際立って業界寄りだった。
昨年晩秋、「派遣斬り」が表面下した直後の厚労省と派遣ユニオンの交渉で、厚労官僚がいつものように「精査に時間を要しておりまして」と答えた。
だが、労働問題に詳しい社民党の福島みずほ党首は「官僚答弁」を許さなかった。「精査に時間を要する、と言って1年かかってるわね。調べるのに1年もかかる事案じゃないじゃない!」と一喝し、具体的な回答を引き出した。
官僚に取り込まれないためにも国会議員には専門知識が要求される。民主党の鳩山代表に近い議員によれば猟官運動が凄まじいのだそうだ。「鳩山さんに会わせてくれ。取り次いでくれ」などと。専門分野を活かすため、この大臣になりたいと言うのなら良いのだが……。官僚答弁などなくなる政府を期待したい。
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