【スリランカ・キリノッチ発】 ジャフナの南隣、キリノッチ県は政府軍が駐留しない。完全な「タミール・タイガー」の支配地域だ。入るには政府軍と「タミール・タイガー」による二重のチェックを受ける。
係官が荷物を開けて軍事利用できるものはないか、などを入念に調べる。双方ともチェックは厳しい。積荷をひとつ残らず降ろさせるため、トラックなどはチェックポイントを越えるのに丸1日費やすことになる。
チェックが厳しいのは、「タミール・タイガー」の海軍にあたる「シータイガー」の基地があるからだ。基地に向かう道路の入り口には、シータイガーが上陸作戦を敢行し政府軍を駆逐した様子を描いた手描きの大看板があり、目を引く。
キリノッチ県にはエレファントパスという“名所”がある。南部への交通の要衝だ。像1頭がやっと通れるという名が示すように狭く、道の両側は海が広がる。タミールタイガーの補給路として極めて重要なことから、内戦時、政府軍は猛攻を加えた。潮風にたたかれて赤さびた戦車の残骸が横たわり、道の両側はびっしりと地雷が埋まったままだ。
地雷除去専門家によれば、津波で沿岸部の地雷が流され学校のグラウンド、民家の庭で発見された、という。
漁村のアリヤ村では、1月31日から漁が再開された。家族総出で海岸に出、魚網を整えるいつもの光景が1カ月ぶりに村に戻った。表情には明るさがさしているようだ。漁師たちはボートを勢い良く海に押し出していた。
魚を運び出す道路は津波の残骸で埋まっていたが、「シータイガー」が除去、清掃して通れるようにした。海水が入り故障していた船外機も、修理してくれた、という。
校舎が流された小学校も授業を再開した。現在、150人がテント、仮設校舎で勉強している。津波で児童10人が死亡、70人がケガで入院した。仮設校舎の建設にあたったのが、日本のNGO「ブリッジ エーシア ジャパン(BAJ)」だ。BAJは津波以前からスリランカ復興事業を手がけており、学校建設はプログラムのひとつだった。
教師のサヤパラン(27歳)は「しばらく(授業は)できないとあきらめていたが、再開できて嬉しい」と話し、白い歯をのぞかせた。