裁量労働制の違法適用で野村不動産の社員が過労自殺した問題―
厚労省に「過労死を公表しても構わない」という内容のFAXを送り付けてきたのは、遺族であることを同省が確認した。
9日夕の野党合同ヒアリングで土屋喜久・大臣官房審議官が認めた。加藤大臣や厚労省事務方はこれまで、FAXだけでは本人であることが確認できない、と答弁していた。
過労死社員の遺族であるこということを認めると、野村不動産で過労死があったことになるからだ。
FAXが届いたのは5日。翌6日には「働き方改革」一括法案の国会提出が閣議決定されることになっていた。閣議決定にも影響を及ぼしかねないため、FAXの送り主が遺族であるということを確認したくなかったものとみられる。
朝日新聞(3月4日付)によると社員が自殺したのは2016年9月。翌2017年春、遺族が労災申請した。
財界の意向を汲んで裁量労働制の拡大を図りたい安倍政権にとって、野村不動産での過労自死はあってはならないことだった。
都合の悪いことは何でも改ざんするのが、この政権の特徴だ。
社員の過労死が認定される前日の昨年12月25日、東京労働局の勝田智明局長は野村不動産の宮嶋誠一社長を呼びつけて特別指導する。
勝田局長は翌26日に記者会見をしたが、過労死については伏せたままだった。「特別指導をしたぞ」と誇らしげに語っただけだ。
勝田局長は同日、加藤厚労相に特別指導の中味について報告に行った。「野村不動産で過労自殺があった」と。
厚労省は当然、官邸にも情報を上げている。安倍首相の耳に入っている可能性は十分にある。
政府は裁量労働制のもとで過労死があったことを知りながら法案を出そうとしたのである。人間の所業ではない。
野党の追及や朝日新聞のスクープがなければ、過労死は闇に葬られていた。
〜終わり~
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