文・辻井裕子 / 主婦
友人の娘が再就職した。残業代、休日出勤手当も払わないブラック企業だ。終電を逃すと会社で仮眠し、始発で帰宅する。シャワーを浴びると、また会社へ。タッチ・アンド・ゴーである。
ワタミ、ヤマダ電機、日本郵便・・・過労死や過労自殺が後を絶たない。このままではいけない、と再就職したのが去年の秋だった。彼女は続けてブラック企業に就職したのである。
真田丸じゃないが、一家総出で知恵を絞って生き残りを考えなければいけない時代になった。
私の周囲にこんな人がいた。「デザイナーでは食べていけなくなったので、事務所をたたんでタクシー運転手になった。それでも食べていくのがやっとだ」。
「地方にいると本当に仕事がない。従業員や家族に迷惑をかけたくないので、倒産する前に会社を整理することにした」という話も聞いた。
2014年の段階で、年収300万円以下の人口が全給与所得者の4割を超えた。その中でも半数以上(=約1,100万人)が、「ワーキングプア」といわれる年収200万円以下だ。
テレビを見ていたら、「お正月商戦で何を買ったか?」という特集をやっていた。銀座の街頭インタビューで、ベビーカーを押した若い夫婦が妻のダウンコート28万円也を買ったと答えていた。
言葉を失った。非正規労働者の2か月分の収入と同じじゃないか。
年金カット法案を通すが、掛け金は毎年値上がりする。子供の貧困は民間基金で賄う。軍事研究の予算だけが増大する。隣国の脅威を煽る。これでは、国家のために庶民が大量に無駄死にした、かつての戦争と同じ構図ではないか?
国家のために庶民が身も心もボロボロになるまで尽しても、何の見返りもなく殺されかねない。
このまま自公政権が続けば、現代版蟹工船「日本丸」の向かう先は、地獄でしかない。
「おい、地獄さ行(え)ぐんだで!」
小説「蟹工船」(小林多喜二)の結末は、ストライキをやろうとした労働者たちが帝国海軍にあっさりと鎮圧されて終わる。
「俺達には、俺達しか、味方が無えんだな。始めて分った。」労働者に言わせた小説の発表から88年目。時代の歯車は逆回転して当時に追いついたようだ。
~終わり~
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