「確固たる目的があって来日した」と語る調査官は、日本の言論状況をよく調べていた。わずか1週間の滞在でよくここまで把握したものだ。
国連・表現の自由調査官のデビッド・ケイ氏(国際人権法学者)が、きょう、日本外国特派員協会(FCCJ)で記者会見を開いた。
11日に来日したケイ調査官は滞在中、ジャーナリスト、市民団体、政府関係者などから精力的にヒアリングした。
「安倍政権のメディア支配」「記者クラブ問題」「高市発言」をはじめ「フリージャーナリストのパスポート没収事件」・・・調査官は記者会見で言論後進国である日本の問題点を斬りまくった。
最も時間を割いて強調したのは「高市発言」と「記者クラブ問題」だった。
ケイ氏は(政権の意向に沿わない)テレビ局の停波にまで言及した高市発言を政府機関から確認した、という。
そのうえで「停波できると放送法に書かれていること自体が問題。政府の規制はあってはならない」とした。
さらに「政治的公平性を謳う放送法第4条を取り消せ」と踏み込んだ。
「我々は何度もタカイチ大臣に会いたいと申し入れたが、国会会期中であることを理由に断られた」。言論の自由調査官は悔しさを滲ませた。
国際社会から見て奇奇怪怪なのが日本の記者クラブである。
ケイ氏はズバリ「記者クラブ制度は廃止すべき」と指摘した。
「政府にとっては都合が良いが、記者クラブはアクセスを制限するツールになっている。市民の知る権利を制限している」と理由を述べた。
欧米の常識から見て理解不能な「政権幹部とジャーナリストの会食の件も聞いた」と話した。
田中は官邸がFCCJを潰そうとしていることについて質問した。首相側近がスタッフに「FCCJのスキャンダルを探して来い」と命じたのだそうだ。
ケイ氏は「それは知らない」と答えた。田中はなぜこんな変な質問をしたのか ―
FCCJは風前の灯にある報道の自由にとって最後の砦だからだ。日本メディアが遠慮して書けないことも外国メディアなら発信できる。
政権幹部に面と向かって厳しい質問を浴びせることもできる。ここが潰されたら次は国民の言論の自由が危なくなる。
ケイ氏は日本の言論状況についての調査報告書を来年、国連人権委員会に提出する。
それまでに憲法が改正され、言論の自由がなくなっていないことを祈るのみだ。
~終わり~