自民党の憲法改正勢力の総帥が、都合の悪い所はオブラートに包みながらも、ホンネをのぞかせた。
船田元・自民党憲法改正推進本部長がきょう、日本外国特派員協会で記者会見を開いた。
「第1回目の憲法改正の国民投票は2年以内に行う。国民投票は数回に分けて行う。第1回目は環境権、財政の健全化、非常事態」― 船田本部長は冒頭のスピーチでこう切り出した。来年の参院選後から憲法改正に着手するという意味だ。
非常事態は改憲草案の第98条、第99条にある。「内閣総理大臣は社会秩序が混乱する事態となった時、『非常事態』を宣言できる」とある。
改憲草案では、現行憲法の最高法規である「基本的人権」(第97条)をわざわざ「削除」とした。そして第98、99条で「内閣総理大臣は非常事態を宣言できる」とあるのだ。
記者団の質問は「基本的人権」に集中した。ドイツ人記者は「国家が個人を守るという概念が抜けている。改憲草案では個人が国家のために尽くさなければならないようだが」と質問した。
日本のインディペンディント記者は「自民党の憲法草案は近代法の概念にない道徳を謳っている」「国民に命令する条文がある」「基本的人権に条件がついている」と突っ込んだ。
船田本部長は突っ込まれるたびに「改憲草案はあくまでもメニュー。国会で揉まれて原案となる」とかわした。
基本的人権を制限する「特定秘密保護法」などが強行採決される現在の状況下、「国会で揉む」などと言われて誰が信じるだろうか? 笑止千万である。
非戦を謳った9条について、船田氏は次のように語った―
「現行憲法9条を素直に読めば自衛隊は認められない。解釈でようやく認めているが、自衛隊を認めない総理が政権を担った場合、一晩で解釈は変わってしまう」
「不安定さをなくすため(改訂憲法では)9条において自衛隊の存在をきちんと書く。我々はそれを追求する」―船田氏は真意を明らかにした。
「基本的人権」を削除して総理が非常事態宣言を出すことは、戒厳令に結びつく。時の政権に不都合な政治家の活動を停止させ、ジャーナリストを逮捕することさえ可能なのだ。
田中は質問の機会を得られなかったので、記者会見後、船田本部長にぶら下がって上記を質問した。
船田氏は「そうとは思わない」とだけ答えて、エレベーターの中に消えていった。
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