福島から力づくでホットスポット消した安倍政権

「健康被害が出たらアンタたちは責任が取れるのかね?」。藤原保正・大谷(行政)区長は官僚に詰め寄った。=26日、参院会館 写真:筆者=

「健康被害が出たらアンタたちは責任が取れるのかね?」。藤原保正・大谷(行政)区長は官僚に詰め寄った。=26日、参院会館 写真:筆者=

 総選挙での大勝を受けた安倍政権は、原発事故を力づくで風化させるつもりだ。政府は南相馬市の特定避難勧奨地点を28日付けで解除した。

 特定避難勧奨地点とは警戒区域や計画的避難区域のように面として広がりはなくても、ホットスポットのような高線量の地点。基準は原発事故発生後1年間の積算線量が20mSvを超えると推定される地点だ。

 特定勧奨地点に指定されると、避難者は行政から支援を受けることができる。

 南相馬市の一部と伊達市、川内村の一部が指定されていた。伊達市と川内村は放射線量が低減したとしてすでに解除され、南相馬市だけとなっていた。

 21日、南相馬市で政府の現地対策本部による住民説明会で、高木陽介経産副大臣が「28日に解除する」と“宣言”した。一方的だった。

 地元説明会に出席した住民80人が反対一色だったにもかかわらず、だ。

 だまし討ちにもほどがある。26日、参院会館で南相馬市の住民たちが解除の撤回を求めて政府と交渉した。(主催:南相馬・避難勧奨地域の会/南相馬特定避難勧奨地点地区災害対策協議会)

 政府からは内閣府の若手官僚が、わずか2人出席しただけだった。

 内閣府・原子力災害対策本部の清水英路参事官補佐は解除の理由を「線量が20mSv/年以下になったため」と説明した。

 住民たちは猛反論した。「政府は一番低い所を選んで計測しているじゃないか」。政府が計測するのは、除染した直後の庭などだ。山のそばの家庭は除染しても山から放射能が降ってくる。

言葉巧みに追及をかわす内閣府の清水参事官補佐。冷たい目が印象的だった。=26日、参院会館 写真:筆者=

言葉巧みに追及をかわす内閣府の清水参事官補佐。冷たい目が印象的だった。=26日、参院会館 写真:筆者=

 そもそも政府が設定した20mSv/年という基準もデタラメだ。原発作業員の被ばく上限が5年間で100mSvだから、政府は住民に原発作業員の上限を押し付けているのだ。

 住民が実際に浴びている放射能は、原発作業員の上限以上ということになる。

 住民の間から「我々は放射線管理区域に住んでいるんだ」の声が相次いだ。

 住民から「なぜ指定を解除したのか?」と追及されると、清水参事官補佐は「20mSv/年以下であれば健康被害はないから」と答えた。

 計測自体がいい加減。しかも放射線管理区域と同じレベルの放射線量の強要。健康に害がないはずはないことは、中学生にでも分かる。

 指定が解除されれば、東電は補償金を払わなくても済むようになる。住民の健康よりも東電。これが政府の姿勢だ。

 住民の一人が「健康被害が出た場合は我々官僚が責任を持ちます、と念書に署名して下さい」と一片の紙を清水参事官補佐に突き出した。

 参事官補佐は「私の一存では署名できない」と拒否した。

 「なぜ署名できないのか? 健康被害が出ないというのであれば、署名できるじゃないか?」会場は一時騒然となった。 

 「解除を撤回しないのか?」
 「撤回しません」

 清水参事官補佐は露ほども悪びれることなく拒否した。政府の決定はいつでも正しい ― 若き参事官補佐は官僚の無謬性を体現していた。

 きょう(28日)午前0時をもって南相馬市の142地点の特定避難勧奨地点は指定解除された。政府は福島県から「ホットスポット(※)」を消したのだ。

 ◇
 ※
ホットスポットは現に存在するが、政府は認めないという意味。

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