「今年こそは私どもにとって希望のかなう年となってくれますように。9度目になりますけども、よろしくお願いします」-
こう言いながら原子力規制庁の清水康弘次長に うやうやしく 要請書を手渡すのは、福井県敦賀市の河瀬一治市長だ。
両国を歩いていると相撲部屋の親方と間違われるという巨体を折り曲げての陳情だ。
敦賀市は「もんじゅ(日本原子力研究開発機構)」「敦賀1、2号機(日本原電)」を抱える典型的な原発立地自治体である。
このうち敦賀原発をめぐっては、原子力規制委員会が「2号機の真下を破砕帯が走っている」とする専門家会議の評価報告書を了承した。
2013年5月のことだ。破砕帯を否定できなければ、再稼働できない。廃炉も現実味を帯びる。
廃炉に追い込まれた場合、交付金に財政を大きく依存する敦賀市は、立ち行かなくなる。何としてでも評価報告書の見直しをさせなければならない。
かくして敦賀市の原子力規制庁通いは、きょう(7日)で9回目となったのである。
河瀬市長は規制庁の清水次長に対して「評価に携わった責任ある立場の者自らが本市(敦賀市)に対して丁寧な説明を行うこと」「評価(報告書)の取り扱いについて具体的に説明すること」などと厳しく迫った。
清水次長は「(原子力規制庁は)活動方針の第一として何物にもとらわれず、科学的技術的観点から独立して意思決定を行う」とかわした。
陳情の後、河瀬市長はぶら下がり記者会見に応じた。
「原発が停まっていることにより流動人口が3千人位いない。原発に携わっている住民もいる。人が動けば泊まる所や食堂なども必要になる。(人が動かないので)かなり落ち込んでいることは事実」。
河瀬市長は経済的な苦境を率直に語った。原発でシャブ漬けにされた自治体の姿がそこにあった。