「再稼働に反対していると、第2の佐藤栄佐久氏になるのではないか、と思ったりしないか?」 きょう新潟県庁で持たれたフリーランスを含めたメディア懇談会で、筆者は泉田知事に質問した。
「ありますね」。知事は間髪を入れず答えた。「車で後を付けられた時は気持ちが悪かった」と振り返った。
東電福島原発のプルサーマル計画に反対していた佐藤栄佐久前福島県知事は、実弟が営む縫製会社の土地取引に絡んで収賄罪で逮捕、起訴された。収賄金額がゼロ円という不思議な汚職だった。国策捜査のはしりでもあった。
泉田知事は御多分にもれず原発推進勢力からネガティブキャンペーンを浴びている。経産省時代の同僚だった古賀茂明氏は「経産省や規制庁の役人が『泉田変人説』を流布している。デマだ」と週刊誌上で明かした。原発推進派のジャーナリストたちがこの「変人説」に基づくデマを喧伝しているのを目にすることがある。
ネガティブキャンペーンで下地ができていれば、検察も動きやすい。「小沢潰し」を狙った陸山会事件が格好の例だ。
自身に対してなされているネガティブキャンペーンについて、クラブ外の記者から質問された知事は次のように答えた―「現実に何が問題かを聞かれた時、それには答えないで、ネガキャンを張られるのは本当に残念」。
メディア懇談会に出て感じたのは、泉田知事が地元記者クラブとしっくり行っていない、ということだった。
再稼働に慎重だった鉢呂吉雄経産相(当時)は「死の街発言」で記者クラブの言葉狩りに遭い、さらには「放射能つけちゃうぞ」を記者クラブから捏造された。そして辞任に追い込まれた。
新潟県の泉田裕彦知事は、自治体の長として住民を守る立場から、東電の安易な柏崎刈羽原発の再稼働に異議を唱える。同原発があわや大惨事となりかねなかった中越沖地震(2007年)の際の政府や東電のズサンな対応が頭に焼き付いているからだ。
国家権力をも支配下に置く原子力村は、再稼働のためならあらゆる手立てを講じてくるだろう。泉田知事が第2の佐藤栄佐久知事にならないように権力を監視していくことが大事だ。