東京メトロの売店で働く非正規労働者6人がきょう、「65歳定年制の廃止」などを求めてストライキを打った。
私たちが地下鉄の待ち時間、夕刊紙・週刊誌やガム・チョコレートなどを買い求めている東京メトロの売店。「メトロコマース」という名の子会社が運営していることはあまり知られていない。
売店の販売員の大半は非正規労働者だ。非正規のさらに大半を占める契約社員Bと言われる女性たちは、時給1,000円~1,030円という安い賃金で働く。税金などを引かれた後の手取り月収は12万円前後。
12万円から光熱費、被服費、家賃などを払う。切り詰めて切り詰めてやっと食いつないでいる状態だ。貯金など、しようにもできない。退職金もない。年金も雀の涙ほどだ。これで65歳になり仕事がなくなったらどうなるか? 配偶者がいなければ、路上に弾き出される恐れさえある。
「このままでは生きてゆけない。生存権にかかわる」として6人はストを打ったのだ。会社側から睨まれるのは必定である。1年毎の契約更新であるため、来年は危うくなることもあり得る。
それでも彼女たちは自分たちだけでなく仲間の非正規労働者の待遇改善も求め、捨て身でストを決行したのだ。
丸の内線「茗荷谷」駅の売店で働く後呂良子さん(58歳=全国一般東京東部労組メトロコマース支部・執行委員長)の訴えが、事態の本質を突いている――
「働けど働けど生活は良くならない…(中略)定年制が廃止されたからといって生活はそれほど変わらない。有期雇用が無期雇用にならない限り、私たちの生活は守られません。老後は安定しません」。
労働者の3割を非正規社員が占める。安倍政権の経済政策の司令塔である経済財政諮問会議は労働法制の緩和を目指している。非正規労働者の割合は、さらに増えることが予想される。
正規社員は定年退職した後も生活してゆけるだけの資力がある。非正規労働者は退職金もなく年金もわずかで蓄えもない。死ぬまで働くしかないのである。
高齢化社会が進むなか彼女たち6人の戦いは、やがて数百万人の非正規労働者の問題となるだろう。