「納得がゆかない、これでは生きてゆけない」。生活扶助費を切り下げられた7,671世帯が昨日、全国の福祉事務所に一斉に不服申し立てをした。
自民党が選挙公約に掲げた「生活保護予算の1割削減」を受けて、厚労省は8月1日から生活扶助費の支給額を切り下げた。来年春、さ来年春と3年がかりで平均6・5%、最大で10%切り下げる。
東京新聞は第1面で扱っていたが、全国紙は冷淡だ。朝日は第5面の左隅で小さく。読売、毎日は全く触れていない。(いずれも18日付・東京版)
筆者は「やはり」と思ったが、落胆を禁じえなかった。庶民にとっては他人事で済まされないからだ。
生活扶助費の切り下げは、38制度以上に連動する。「最低賃金」「住民税の非課税」「介護保険料」「公営住宅家賃の減免」「就学支援」……。低収入世帯は真綿で首を締められることになるのだ。
政府は生活扶助費切り下げの理由を「物価の下落」としているが、アベノミクスによる輸入原材料の値上がりで、物価は上がっているのだ。東京新聞と朝日新聞は「7600世帯の不服申し立て」を報道しているが、政府の辻褄が合っていないことへの指摘はなかった。
ひと月8万数千円で暮らしていた男性(50代・新宿区)が、8月に支給された生活扶助費は7万9千円だった。最終的には1万円減額されそうだ。鳶(とび)職の彼は、椎間板ヘルニアと糖尿病を患っていて、仕事をしようにもできない体だ。「これ以上減額されたら生きてゆけない」と話す。
アベノミクスによる物価値上がりに加えて、来春からは消費税増税が追い討ちをかける。上述したように生活扶助費の切り下げは、他の制度にも連動して庶民を苦しめる。そこに消費税増税がのしかかる。
「消費税増税は必要」と囃し立てながら、自らは軽減税率の適用を政府に求めるマスコミ。生活感なき新聞報道が続く限り、庶民の暮らしは苦しくなるばかりだ。
「これから年金引下げ、医療費値上げと社会保障は削られていくだろう。生活保護の切り下げは手始めに過ぎない。ここで(歯止めの)クサビを打ち込まなくてはならない」。社会福祉事務所のケースワーカーを長らく勤め生活保護問題に詳しい森川清弁護士は、国民生活への悪影響を警戒する。