自民党が選挙公約に掲げた「生活保護予算の削減」を受けて、厚労省は今月1日から生活扶助費を切り下げた。来年4月、さ来年の4月も切り下げ、生活扶助費は最終的には平均で6・5%、最大で10%切り下げられる。
「これでは生きてゆけない」。生活保護受給者と弁護団は来月にも、全国の社会福祉事務所に一斉で審査請求をする。「生活扶助費切り下げ処分」の取り消しを求めるのである。
厚労省は平均6・5%とした切り下げの根拠のひとつに物価下落分をあげていた。ところが物価は、アベノミクスがもたらした輸入原材料の高騰を受けて上がっている。
生活扶助費の切り上げとさらに矛盾してくるのは、安倍政権が消費税の増税を本気で検討していることだ。
社会福祉事務所のケースワーカーだった森川清弁護士は「消費税3%が導入された時(1989年実施)、生活保護基準も引き上げられた。5%の時(1997年)もそうだった。なのに今回だけ切り下げられるのはおかしい」と話す。
きょう都内で生活保護受給者の審査請求を受け付ける相談会が開かれた(主催:つながる総合相談ネットワーク)。
世田谷区在住の女性(70代)は「(生活扶助費が)減らされたら大変」と眉をしかめた。女性は電気代(クーラー代)を節約するために日中は区民センターで過ごすという。少しでも安い食材を買うのにスーパーからスーパーへと歩き回るそうだ。
「これで消費税が上がったらどうなるのか?」彼女は切々と訴えるように言った。
新宿区在住の男性(50代)は、椎間板ヘルニアと糖尿病を患って職を失ったため生活保護を受けている。7月までは8万数千円受給していた生活扶助費が、8月分から7万9千円に切り下げられた。最終的には約1万円の減額になりそうだ。
男性は100円ショップで食材を買い自炊する。3,000円あれば1週間分の食事を賄えるという。1万円も減額されたら3週間分以上の食費がなくなることになる。
「(扶助費を)これ以上切り下げられたら、たまったもんじゃない。生活してゆけない」。男性は悲鳴をあげる。
生活扶助の切り下げは、生活保護受給者だけの問題ではない。最低賃金、課税基準、医療費などに影響してくる。庶民の経済負担は増えるばかりだ。