イラク開戦からちょうど10年が経つ。米軍が侵攻すると小泉政権はすぐに支持を表明し、新聞テレビはこぞってそれに同調した。「国際社会の安全を脅かすフセイン政権を倒せ」と書き立てたのである。
ところが探せど探せど大量破壊兵器は出てこなかった。米軍の侵攻はイラクの宗派対立を激化させ、この国を内乱状態に陥れた。
誤った戦争を支持した反省は、日本政府、マスコミ共にない。ばかりか小泉政権の幹事長だった安倍晋三首相は、「改憲」「国防軍」創設を唱える。米軍のイラク侵攻時と同様、マスコミは平和を脅かす「改憲」と「国防軍」に警鐘を鳴らさない。
国会も変だ。共産党、社民党などを除く野党までが改憲を言い出すありさまである。翼賛体制と言えば短絡的だろうか。
中国は尖閣諸島をめぐり日本の領有権を脅かす。北朝鮮は核実験とミサイル発射だ。米軍のイラク侵攻の口実とよく似た環境が、日本の周辺に作られつつある。
キナ臭い雰囲気が漂うなか、「国防軍反対、改憲反対デモ」がきょう都内で行われた。(呼びかけ人:田川豊さん=団体職員・都内)
学生時代に教育基本法の改悪反対デモに参加したという女性(28歳・都内)がいた。この時は第1次安倍内閣だった。「今度は国防軍と改憲。因縁としかいいようがない」。女性は顔をしかめた。
ヘルメット、ジャンパー、ズボン、靴。世田谷区の会社員(男性・58歳)は、頭のてっぺんからつま先まで黄色づくめで参加した。黄色は反原発のシンボルカラーだ。
「反原発と反戦は通じるものがある。両者ともアメリカが持ち込んだものだから。日本は侵略戦争の反省を戦後の出発点にした。それを崩す国防軍と憲法改悪を阻止したい」。男性は言葉を噛みしめるように話した。
名物男の火炎瓶テツさんは、デモ出発前のスピーチで参加者をわかせた。「東日本大震災の復興もままならないのに、何で降って湧いたように国防軍なんですか? そんなことやってる場合ですか?」
テツさんはじめ、誰しもごく当たり前のことを言っているに過ぎない。マスコミと政治家たちにごく当たり前のことが通用しなくなった時が、「いつか来た道」だ。