東京・新大久保できょう、「春のザイトク祭り」という名の他民族排撃デモが繰り広げられた。ザイトクとは在特会(在日特権を許さない市民の会)のことである。
14日には議員の有志が民族差別に抗議する集会を開くなど社会問題としても大きくなりつつある他民族排撃デモ。注目を浴びるほど行動がエスカレートしてくるのが思想・哲学なき集団の特徴だ。前回取材した(2月17日)時は100人をわずかに上回る程度だったが、きょうのデモ参加者はざっと数えて150人余りにのぼった。
「除鮮」「死刑武隊」「祖国を蝕む害虫を撃つ」…下劣な言葉を連ねたノボリやプラカードが、日の丸や旭日旗の群れにまじる。「出て行け朝鮮人」「殺せ朝鮮人」…サングラスやマスクで顔を隠した参加者たちはこの上なく汚い言葉を吐き続けながら大久保通りを練り歩いた。
「民族差別は許さない」と立ち上がり新大久保に駆け付けた市民(カウンター)も前回より増えた。市民たちは歩道上からデモ隊に「帰れコール」を浴びせる。在特会のメンバーはそれに食ってかかる。
機動隊がデモ隊の両脇にはりつき、観光客や買い物客で賑わう新大久保の街は騒然とした。韓国料理、韓国食材、韓流グッズ、韓国化粧品…。韓国の街がそのまま移転してきたような街には、当然のことながら在日コリアンが多い。彼らは在特会のデモに眉をひそめる。
韓国料理店で呼び込みをするアルバイトの韓国人青年は、東京の料理専門学校で学ぶ留学生だ。日本に来て3年になるという。「彼らは毎週のように来る。(今のところ)店には被害はない。(死ねとか殺せとか)聞くに耐えない。恥ずかしくて祖国の人には言えない」。
日本人男性と結婚し新大久保に住む韓国人女性もデモには困惑気味だ。「竹島問題などで夫とは意見が合わないが、大統領も変わったことだし、日本と韓国は仲良くした方がいいんじゃないかな」。複雑な立場に置かれた彼女は無難に答えた。
ツイッターなどでカウンターを呼びかけた木野寿紀さん(30代会社員・都内)は、仲間と共に「仲良くしようぜ」と書かれた風船500個を道行く人に配った。
Kポップグッズを買い求めて埼玉から来た女子中学生が真っ先に受け取った。「あんな(民族排撃)デモはやめてほしい」。少女は悲しそうな表情で話した。
民族共生が国際的潮流のなか、他民族を侮蔑する表現の自由などあり得ない。
にもかかわらず、耳を覆いたくなるヘイトスピーチが罷り通るのなら、日本でもそろそろ法規制が必要なのではないだろうか。