田中俊一委員長は、やはり原子力ムラ寄りの人だったのか― 名雪哲夫審議官(1日付けで更迭)による情報漏えい事件を受けた記者会見で、田中委員長のコメントを聞いていてそう思わざるを得なかった。
記者会見に先立ってきょう午前開かれた原子力規制委員会の冒頭、島﨑邦彦委員がマスコミ2社の具体名を挙げて「なぜこうも情報が抜けるのか?」と不快感を示した。
日本原電に活断層の評価報告案(草稿=ドラフト)を手渡した名雪審議官ばかりでなく、別の規制庁職員もマスコミに情報を漏えいしているのである。情報管理のズサンさには呆れるばかりだ。
午後の記者会見で筆者は田中委員長に上記を質した。委員長は「そういう方がいたことは残念だ」と答えた。ここまでは常識的だった。
ところが次の質問に対する回答にいささか驚かされた。筆者は「面会のルール(※)を厳しくしたところで(事業者と規制庁職員が)外で会えばどうしようもないではないか?」と尋ねた。
田中委員長は「そこまで(外で会わせない)は自分の子供にもできない…(中略)…アウトローが出ないという約束(保証)を私はできない」と開き直った。
規制庁の職員はいやしくも国家公務員だ。無法者予備軍に税金から給料が支払われているのである。開いた口が塞がらないとはこのことだ。
さらに驚く答えが田中委員長の口から飛び出した。記者クラブ外の雑誌記者が「今回の漏えいは業者との癒着=従来の体質を引きずっているものなのか?」と聞いた。
田中氏は「癒着と言い切れるようなものではない。不用意だった」とイケシャアシャアと答えたのである。
原発の下の地層が活断層と結論づけられれば運転停止となりかねない。電力会社にとっては死活問題だ。それに関わる情報を規制庁が業者に手渡す。癒着と呼ばずに何と言うのだろう。
田中氏はさらに「(日本)原電は必死だったのだろう。そういう(漏えい)事態を招いてしまった私どもに責任がある」とまで言い、電力会社の肩を持った。
きょう国会で所信を聴取された田中委員長は「最も高いレベルの安全基準を目指す」と豪語した。事業者に寄り添うこの御仁の言葉をどこまで信じればよいのだろうか。
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※面会ルール
名雪審議官による情報漏えいを受けて原子力規制委員会は、規制庁職員が事業者と面会する際の手続きを厳格化した。「面談が5分間を超えた場合は内容を公開する」「翌日の面談予定を総務課に登録する」など。