「きょうはTBSが死んだに等しい日」。同局の看板キャスターだった筑紫哲也が喝破した。29年前のことだ。
同局の取材クルーがオウム真理教に放送前の取材映像を見せたことが原因で、弁護士一家がオウムに殺害されたのである。
性接待疑惑で世の批判を浴び、米国の株主からも調査を要求されるフジテレビ。人こそ死んでいないが自社の女子アナを人気MCの中居正広にあてがっていたことが、週刊文春の報道で明らかになっている。
きょう17日、同社の港浩一社長が疑惑を受けて記者会見を開いた。出席できるのは「東京放送記者会」「ラジオ・テレビ記者会」の加盟社のみ。お身内である。これでは記者会見ではなく懇談会だ。
公共の電波を格安で独占するテレビ局が、人身売買にも等しい犯罪をしでかしているのにもかかわらず、内々で揉み消そうという魂胆がありありだ。
田中は許せなかった。フリーランスは記者会見に出席できないということは分かっていたが、お台場のフジテレビ本社に向かった。
玄関で警備員に誰何されたので田中が「社長の記者会見に来た」と答えると、警備員はレシーバーでその旨を中に伝えた。
フジの広報が出てきて「きょうは定例会見ですので加盟社のみの参加となっております」。
田中は「(中居の性接待疑惑が)これだけ社会問題となっているなか、加盟社だけというのはおかしいではないか」と食い下がったが、広報担当者は「きょうは定例会見でして、加盟社のみの出席となっております」の一点張りで出席を拒否した。
50歳前後の男性管理職だ。顔には笑みを絶やさない。この手合いはふつう目が冷たいのだが、瞳もニコニコしている。敵意を抱かせず、なかなか巧みであった。
東京MXのキャスター堀潤氏も「記者会見に出席させろ」と言って現場に来ていた。れっきとしたテレビ局でありながら出席できなかったのである。昨日16日、質問状をフジ側に送ったが返事は来ていない、という。
堀氏は記者会見の分岐映像を要求したが、「映像はない」と断られた。
前出のフジ広報担当者は田中に「定例会見なので映像はありませんでして」と悪びれずに説明した。テレビ局なのに映像がないとは、落語のオチにもなりはしない。
フジは疑惑の調査を「第3者委員会に委ねる」というが、日弁連のガイドラインを満たすような第3者ではない。お身内の調査で揉み消すつもりだ。
きょうは「フジテレビが死んだに等しい日」となった。
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