誰もイスラエルを止めることができない。イスラエル軍による国連停戦監視軍への砲撃は、一線を越えた事件だった。
レバノン南部に侵攻しているイスラエル軍は10~11日、UNIFIL(国連レバノン暫定駐留軍)を砲撃し、アイルランド軍とインド軍(当初はスリランカ軍との報道があった)の平和維持部隊員4人を負傷させた。インドの隊員は監視塔から転落したというから威嚇ではない。
今頃になって米バイデン大統領は「UNIFILへの攻撃を止めるようイスラエルに促す」などと言う有様だ。言ってもイスラエルは聞く耳を持たないだろう。
国連監視軍は兵力1万。イスラエル軍は5万。装備においては、メルカバ戦車に代表されるようにイスラエル軍が圧倒的に優位である。極端な言い方をすれば「B29と竹槍」である。
イスラエル軍にとって相手ではないのだから、国連監視軍を避けて侵攻し、ヒズボラを撃滅すればよい。
それでも国連の部隊が立ちはだかるというのであれば、自慢の大型ブルドーザーで排除すれば事足りるはずだ。
にもかかわらず凄まじい破壊力=殺傷力を持つメルカバ戦車で国連の部隊を砲撃したのである。イスラエルの狂気という他ない。
ヒズボラのナスララ師、ハマスのハニーヤ氏といったトップリーダーたちをイスラエルは次々と暗殺していった。ホワイトハウスが知っていようが知っていまいがお構いなしだ。
かつての米国であれば止めることができた。いや、止めていた。
PLOアラファト議長のケースがそうだった。イスラエル軍がベイルートを包囲していた1982年のことだ。
アラファトがトリポリの港からレバノン脱出を図ろうとしていた際のことだ。
アリエル・シャロン将軍(後に首相)の側近から直接聞いた話だが、「Arafat is in rifle area(発言ママ)=アラファトは(イスラエル軍の)ライフルの射程の中にいた」。
その時、ホワイトハウスからストップがかかった。引き金は引かれなかった。レーガン政権時である。
政権末期ということもあり米国はイスラエルを止める気もない。止めてもイスラエルは聞かないだろう。
ネタニヤフ首相が警告したように「イスラエルはレバノンをガザのように壊滅する」だろう。
そのあと、イランまで攻撃するようなことになれば、それこそ終末戦争となる。中東は行き着く所まで行くのだ。
~終わり~
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産油国イランを巻き込んだ大規模戦争に発展しつつある今回の衝突を、現地から伝える日本人ジャーナリストは今のところ、田中龍作だけです。
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