軍人ほど軍事力の行使に慎重になる、と言われる。戦争の現実と怖さを知っているからだ。
開戦した以上、どんなことがあっても勝利しなければならない。それ以上に自国の国土と国民への被害を最小限度に食い止めなければならない。簡単に武力行使できるものではないのだ。
指揮官は交戦相手の兵器、将兵の練度、兵站を把握し、自軍のそれらも知り抜いていなければならない。
緻密な計算の上で勝てると確信し、そして自国民の犠牲が最小限で済むことの確証が持て、初めて武力行使に踏み切れる。
「占領した土地をパレスチナに返す」と言って、PLOのアラファト議長との間で「土地と和平の交換」(オスロ合意)を約束したイスラエルのラビン首相は、極めて優秀な軍人だった。
ラビンがユダヤ教の極右青年に暗殺(1995年)されなければ、「土地と和平の交換」は実現した可能性がある。
地域の力関係を決定づけた第3次中東戦争(1967年)で、ラビン将軍率いるイスラエル軍はわずか6日間で、アラブ連合軍に勝利した。
戦争は期間が短ければ短いほど市民生活への影響が少なくて済む。もちろん将兵の死傷者も少なくて済む。
ラビンがもし今、イスラエルの首相だったら、泥沼のようなガザ侵攻は間違いなく決行していないだろう。
ラビンと真逆の首相となる恐れがあるのがコバホークこと小林鷹之氏だ。
観念的タカ派は実戦経験もなければ、軍隊経験もない。二言目には「防衛力の増強」を唱え、「敵基地先制攻撃」などと勇ましいことを言う。
自衛隊法第7条では内閣総理大臣が自衛隊の最高指揮監督権を持つとしている。
「緊急事態条項の創設と自衛隊明記は喫緊の課題」などと臆面もなく唱える観念的タカ派に自衛隊の指揮権を持たせたらどうなるか。
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戦争と平和はコインの表と裏です。戦地の現実を伝えるのが田中龍作の仕事です。