イスラエルほど核に敏感な国はない。
2011年大津波に襲われた三陸海岸を取材していた時だった。我が目を疑うような光景に出くわした。
ダビデの星(イスラエル国旗)が三陸の海風にはためいているのだ。イスラエルの野戦病院だった。
野戦病院といってもイスラエル兵の手当をしているのではない。放射能の測定をしているのだ。
イランやガザに限定核を落とした場合を想定し、放射能の飛散具合を調査しているとしか考えようがなかった。恐ろしいほど合理的でケチなユダヤ人が、そうでもなければ三陸沖まで高い交通費をかけて来るはずもない。
福島原発のある大熊町とガザやイランまでとは距離が違い過ぎるが、生データを得るまたとない機会となる。
イスラエル軍がガザに侵攻して間もない頃、ネタニヤフ政権の極右閣僚がメディアのインタビューに「核兵器をガザに落とすことも選択肢」と答え、物議を醸した。昨年11月のことだ。
こんなこともあった。イラクのサダム・フセインが開発を進めていた原子炉が完成の域に達しそうになっていた。それをモサドがキャッチした。1981年のことだ。
イスラエル空軍は精密誘導弾などない時代、原子炉を手動で空爆し、核開発にかけるサダムの野望を打ち砕いた。
イスラエルにとって核抑止力とは相手に核を持たせない力なのである。
民族が根絶やしにされかけた経験を持つイスラエルの強烈な防衛本能だろう。
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田中はイスラエルという国を良しとするわけではない。ただアメリカを自分のATMにするしたたかさは見習うべきだと思っている。日本と真逆だ。
田中龍作ジャーナルは冷厳な世界の現実を伝えます。