日本が大揺れに揺れた福島原発事故(2011年)の直後にこんなことがあった―
知人の女性が長年連れ添ってきたパートナーと別れることになったのである。原発に対する姿勢の違いが直接の原因だった。彼女は熱心な脱原発派。彼は原発容認派だ。
原発から派生する様々な問題で2人の溝は埋めがたいものとなった。10年以上も前のことなので具体的なセリフは正確に思い出せないが、彼女が「原発事故をきっかけに彼との考え方の違いが克服できない所まで来た」と吐露していたのを思い出す。原発の広い裾野は、カップルさえも巻き込んだのである。
脱原発か原発容認かは、東京都知事選挙でも真っ向から問われることになった。東京都は事故を起こした東京電力の大株主だからだ。
2014年の都知事選挙は舛添要一と細川護熙と宇都宮健児が三つ巴で争った。脱原発を訴える細川元総理には、同じく元総理で脱原発派の小泉純一郎が付いた。
脱原発陣営は宇都宮支持と細川支持で真っ二つに割れた。リベラル勢力は小泉が米国のイラク侵攻を支持したことを批判した。米軍がイラクに侵攻した理由となった大量破壊兵器はどこを探してもなかったのである。にもかかわらず小泉は頬被りしたままだった。それもあって細川陣営は盛り上がりに欠き、細川候補は3位、惨敗となった。
原発事故に勝るとも劣らぬ衝撃を世界にもたらしているのが、ロシアのウクライナ侵攻だ。
ロシアの巧妙なプロパガンダ(陰謀論)が、反米をこじらせた人々に一定の支持を得ている。陰謀論を信じた人は親露となった。プーチンが日本を米国から解放してくれるとでも思っているのだろう。
参院選挙が事実上始まっている。今月22日公示、来月10日投開票だ。
小泉がブッシュのイラク侵攻に協力した過ちを認めていたら、2014年の都知事選挙は違った結果となっていただろう。(当選していたというわけではない)
陰謀論は馬脚を現す。山本太郎が「ロシアを擁護するわけではない」などと前置きしても「NATOの東方拡大」と「ウクライナ東部の人権問題」を持ち出せば、プーチンは大喜びだ。ロシアにとっていい所取りだらけで、誰から吹き込まれたのかと勘繰りたくなるほど一方的な情報である。
これまで山本太郎に好意的だったある法曹人も「山本太郎はあそこまで陰謀論に傾斜して大丈夫か?」と深く憂慮する。
結果としてロシア擁護となるスタンスを取り続ける山本太郎に対して、根っからの支持者から失望の声が次々と私のもとに届く。中には山本太郎が衆院選に初挑戦した2012年から選挙を手伝ってきた人もいる。
「●党や●●と同じレベルの危険な政党」
「まともな政党として発展してくれることを願う」
「東西冷戦思考から脱却できていない」・・・
コアな支持層が離反する政党は危うい。
山本太郎よ。ウクライナまで行かなくていいから、北欧のバルト3国や東欧のポーランドを見て来い。そして民族の話を聞いて来い。ロシアがどんな国なのか分かるから。もっとしっかりしろ。
(文中敬称略)
~終わり~