開戦から72日目、5月8日。
ガソリンスタンドに向けて並ぶ車の列は1㎞を超えていた。台数は長距離輸送のトラックと乗用車を合わせると200台以上に上った。
やっとこさ供給を受けることになったドライバーは「3時間待った」と話す。
ガソリンの値段は戦前と比べると25~30%上がった。
理由はガソリン不足である。ロシア軍が石油の精製工場やガソリン貯蔵施設を破壊したことが大きい。黒海封鎖もある。
「我々は独立(1991年)以降、初めてのオイルショックを経験する」。地元ジャーナリストは顔を曇らせた。石油不足と価格の高騰が今後さらに深刻になることを見越してのコメントだ。
今回の戦争を受けてロシアとベラルーシ(※)からの輸入が途絶える。両国からの輸入はウクライナの需要の50%を占めていた。
ウクライナはEUからの輸入に頼ることになるが、EUとてロシアからの石油の輸入は途絶する。
石油価格の高騰は避けられないのである。
日本は2度にわたって石油ショックを経験した。いずれも中東での戦争が引き金だった。
第1次オイルショック(1973~74年)は狂乱物価と物不足を招き、トイレットペーパーの買い占めなどが起きた。
当時の日本は右肩上がりの経済成長を続けていたから何とか凌げたが、いま石油ショックに襲われたら、ひとたまりもないだろう。
今回の戦争が長引いたり中東に飛び火したりすれば、第3次石油ショックが到来するだろう。
日本は石油ショック最前線の一歩手前にいる。
(※)
ベラルーシは産油国ではないが、ロシアの石油を精製して輸出する。
~終わり~
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