開戦から17日目、3月12日。
キエフ中央駅。侵攻直後のような避難ラッシュは、ひとまず落ち着いたとはいえ、西に向かう避難列車は満員だ。
行先はポーランド国境の都市リビウである。田中も取材で訪れたことがあるが、飛行機で1時間30分かかる。列車だと丸一日がかりだ。
ウクライナ軍の幹部養成学校と訓練施設があり必ずしも安全とはいえない。
西に向かう列車の運賃は無料だ。リビウ行きは1日3~4本。
図々しいのを承知で田中は車内に足を踏み入れた。
避難者の多くが携帯電話で連絡を取り合っていた。
親戚や友人に「キエフを離れるからね」と言っているのか。残してきた家族に「列車に乗れたよ」と言ってるのか。聞きとれない。
インタビューなど、とてもじゃないが、できる雰囲気ではない。
ロシア軍が侵攻して来てから2週間以上が経つ。行くあてがあれば、もっと早く脱出していたであろう。避難者の多くは憔悴し、絶望しきった表情だ。
「ポーランドで仕事がなくても、住む所がなくても、死ぬよりいい」。
発車間際になって駆け込んでくる乗客の後ろ姿が、そう語っているようでならなかった。
国連によるとウクライナから約200万人が隣国に逃れた。残る4,200万人はロシア軍の無差別爆撃とその後の陸上侵攻に怯える。
避難民はまだまだ増える。
~終わり~
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カードをこすりまくりながらの現地取材です。
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