「死人に口なし」 獄中放置死の責任問う国賠訴訟

=15日、日比谷 撮影:田中龍作=

 無実を訴えていた無期懲役囚が2019年5月、獄中死を強いられた。事件があったのは、今からちょうど50年前の11月14日。

 沖縄返還協定の批准を阻止しようとする学生や活動家が、全国から動員された警察官1万2千と衝突した。渋谷事件(1971年)である。309人が凶器準備集合、公務執行妨害などで現行犯逮捕された。騒乱状態のなか新潟県警から派遣されていた機動隊員1人が、火炎瓶を浴びて死亡した。

 警察はでっちあげた供述から高崎経済大学生の星野文昭さんらを殺人罪で指名手配、後に逮捕した。無期懲役となった星野さんは獄中で肝臓ガンを患ったが、事実上放置され死亡した。享年73歳。

 死人に口なし。国家権力は冤罪を闇に葬ったのである。

 「適切な医療措置を怠った」として妻の暁子さんが国を相手取り、5,500万円の損害賠償を求めていた。国賠訴訟の第8回口頭弁論が、きょう15日、東京地裁であった。

=15日、日比谷 撮影:田中龍作=

  裁判の争点は以下―

1)2018年6月頃から体重が減り続け、8月に腹痛発作で倒れた。

2)2019年3月、腹部エコー検査で肝臓腫瘤を発見。
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4月18日、服役中の徳島刑務所から東日本成人矯正医療センター(東京都昭島市)に10時間かけて移送。
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5月28日、6時間かけて腫瘤の切除手術。腫瘤は最大で14㎝×11㎝もあった。4,300ml出血、血圧は一時40まで下がった。
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     しかし集中治療室には入れられなかった。
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5月29日午前1時30分に巡視した後、3時間半放置。
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    午前5時03分、看護師が容体の急変に気付く。
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5月30日午前9時44分、死亡。腹腔内に大量の出血があった。死亡診断書には「肝右葉の巨大な腫瘍」。

中央は妻の星野暁子さん。=15日、霞ヶ関 撮影:田中龍作=

 原告は▽「(2018年当時、徳島刑務所で)体重の減少が続き腹痛発作で倒れた際、悪性の腫瘍(ガン)を疑うのが医学上の常識であるにもかかわらず、検査をしなかった」▽「手術後、血圧が急速に低下しており、エコー検査を行うべきだった。術後の対応に問題があった」としている。

 被告の国は、「エコー検査まで行う法的義務はない」と突っぱねている。

 原告は次回の弁論に向けて医師の意見書を出す。「手術後に然るべき対応をしていれば星野さんの命は100%助かった」とする内容だ。

 村主隆行裁判長は「意見書を早く見たい」と述べた。

  ~終わり~

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