「アルバイトしていた飲食店で店長と意見が食い違ったら、店長から『もう明日から来なくていいよ』と言われた。
その時、不当解雇であることが分からなかった。労働基準監督署に相談に行って法律を教えてもらった。法律を知らないと搾取されてしまう。自分が弱い立場の人間になってしまう」。
25日告示の都議会議員選挙の武蔵野市選挙区に立候補する五十嵐えりさん(弁護士・立憲)が街頭で道行く人に語りかけていた。五十嵐さんが法律家を志した理由だ。
当時、不当解雇された五十嵐さんは収入の道を閉ざされ不安で不安で仕方なかったという。
新自由主義路線をひた走るこの国にあっては、労働者を守るためにあった労働法制が無力になろうとしている。
その象徴が「解雇の金銭解決」制度である。その制度とは―
労働者Aさんが「不当解雇だ」として「復職」を裁判に訴えたとする。裁判所がAさんの訴えを認めて「解雇は無効」としても、会社側が金銭さえ払えばAさんは「復職」ではなく「退職」となる。
厚労省では「解雇の金銭解決」制度の検討が進む。2018年6月から始まった検討会(※)は、金銭解雇の際のルール作りの段階まで来ているようだ。
会社側はルールに沿って金さえ積めば、労働者を切りたい放題となるのである。不当解雇であっても金さえ積めば「合法」になるのだ。解雇の自由化といわれるゆえんだ。
解雇をめぐっての労使の駆け引きも不要となる。これまでの労働法制緩和の流れからして、解雇の際の金額も、経営側のペースで決まることは避けられない。
雀の涙ほどの金額で解雇されることになるだろう。
労働者の使い捨ては仕上げの段階に入った。
~終わり~
(※)
解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会
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