「由らしむべし、知らしむべからず」。都合の良いことだけ知らせ、悪いことは隠そうとする石原都政のやり口が法の裁きを受けることになった。豊洲(東京・江東区)への移転に反対する築地の仲卸業者らが、「東京都はボーリング採取した豊洲の土を廃棄しないでほしい」と訴えた訴訟の第1回口頭弁論が7日、東京地裁で開かれた。
築地市場の豊洲移転を計画している東京都は、東京ガスの工場跡地である豊洲の土壌に環境基準を大幅に上回る毒性が含まれていると指摘されていることから、2007年~08年に専門家に依頼して地質調査を行った。
専門家会議と都は4,400ヶ所の地点でボーリング調査(最深7メートル、最浅30センチ)し、約600ヶ所の検体(コアサンプル)を保存した。
日本環境学会は08年11月から今年3月にかけて口頭や文書で「採取した土の開示と保全」を要求していた。都はじらしにじらした挙句、6月25日付けで「(採取した土の)検体は廃棄する」と回答してきたのである。
豊洲への移転に反対する築地の仲卸業者や消費者らは「検体が廃棄されれば、どの深さでどの汚染物質があるのか分からなくなる」として8月、東京地裁に廃棄差し止めの訴訟を起こした。
これまでの書面のやりとりで東京都は「4本の検体をすでに捨てた」ことを明らかにしている。証拠を隠滅したのである。
豊洲への移転をめぐる東京都の情報隠しは今に始まったことではない。07年5月、民主党の議員団が現地を視察した時のことだった。新市場建設課(当時)の課員が37ヘクタールもの広大な豊洲の予定地を案内するのだが、拡声器を使って「右に行って下さい、左に行って下さい」と指示した。
筆者は「おかしいな、変だぞ」と疑った。案の定、移転問題を追及している川内博史衆院議員(現国土交通委員長)がよく通る声で「そっちじゃないでしょ!」と課員を制した。課員は「しまった」という表情を浮かべた。
川内議員が指す方向に行くと地下水がしたたり落ちる窪地に出くわした。地下水をリトマス試験紙につけるとアッという間に紫色に変わった。ペーハー観測器は11・30(中性は7・0)を指した。
すると東京都新市場建設課の飯田一哉課長(当時)が「検査等の行為はやめて下さい」とヒステリックに叫んだ。筆者が「なぜ(検査しては)いけないの?」と尋ねたが、飯田課長は答えなかった。これなどは序の口だった。
「豊洲は土壌対策さえ行えば安全である」と吹聴するために東京都が委嘱した専門家会議は07年~08年の間、現地調査を続けた。発足当初は都の方針を追認するかのような見解を示していたが、現地の土壌を知るにつれて安全性に疑問を抱くようになったのだろう。都が指定した調査期間を終える際、平田健正座長(システム工学・和歌山大学教授=当時)は「慎重を要するためにも調査はさらに続けた方が良い」とまで言った。
ところが東京都の公式発表は「平田座長は『十分な土壌対策を講じれば安全性は確保できる』と結論づけた」であった。見事な改ざんだ。都合の悪いところは一切表には出さず、事実をねじ曲げてまで自分に有利なように誘導する。情報操作など飛び越えて、ある種「詐欺」である。
東京都が廃棄した4本の検体(採取した土)にはどんな化学物質が含まれていたのか。いつの時点で捨てたのか。「不都合な真実」は力づくで隠す石原都政の悪業と共に明るみに出るだろう。裁判の行方が楽しみだ。
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