米国とイラン。双方の自制により、全面戦争はひとまず回避された。だが、中東が世界の火薬庫であることに変わりはない。
安倍首相があさって11日から予定している中東歴訪の中止を検討するなか、政府は海上自衛隊を予定どおり中東に派遣する方針だ。
いつものこととは言え、不可解である。野党がきょう、防衛省、外務省、内閣府から事情を聴いた。
防衛省の説明によれば、派遣されるのは護衛艦「たかなみ」(6,300トン)とP3C対潜哨戒機3機。「たかなみ」は今月27日頃、横須賀基地を出港し、それから3週間後(2月中旬)に中東海域に到着する見込みだ。
バグダッドの米軍施設に撃ち込まれたイランの短距離弾道ミサイルは「シャハブ2」と「キアム」と見られる。
イランは正規軍35万人を擁するが装備が老朽化しているため、正規戦では不利となる。このためミサイル攻撃やゲリラ戦などの非対称戦争で戦う。これを担うのが革命防衛隊だ。
米軍はベトナム戦争以来、非対称戦争に苛まれてきた。現在もアフガニスタンで苦戦する。
日本は米国の主導する有志連合に参加しなかったとはいえ、海自のP3Cが収集したデータは米軍と共用される。
バーレーンにある米海軍第5艦隊司令部には、幹部自衛官が情報将校として派遣される。
誰がどう見ても米軍と自衛隊は一体運用である。紛争の絶えない中東で揉まれてきたイランが、これを見逃すとは考えられない。
野党議員が「アメリカとイランとの間で戦闘が起きる可能性はないのか?」と問うと、内閣府は「お答えは差し控えます」とかわした。
「たかなみ」は単独航行である。艦隊を組んでいないため、攻撃されればひとたまりもない。
革命防衛隊はソマリア沖の海賊とはレベルが違うのだ。
米軍とイランが戦闘状態に入れば、米軍の同盟軍とみなされている自衛隊が、イランの攻撃に遭っても何ら不思議はない。
政府官僚の立場では「お答えは差し控えます」という他ないのだ。
元陸上自衛隊レンジャー隊員の井筒高雄氏は次のようにコメントした―
「自衛隊を派遣するということは戦争当事国になるという認識が(政府には)極めてない。相変わらず『自衛隊が行くところは安全』『狙われないんだ』みたいな性善説に立って、今の状況を強行突破することは好ましくない」。
~終わり~
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