「派遣村は走るバス」~警察に咎められ

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鉄柵の右が官製派遣村の置かれたオリンピック・センター。生活相談に応じる「ワンストップの会」のバスに乗るため入所者が長い列を作った(2日午後。写真=筆者撮影)

 「家賃は5万3,700円までだったら福祉事務所が出してくれます」「年齢などによってマチマチですが、おおよそ8万5千円、生活費として給付されます」……。観光バスの室内前方に立ちガイドよろしく“案内”しているのは、「ワンストップの会」のメンバーだ。同会は仕事と住居を失った労働者がテントと食事を求めて長蛇の列を作った、08年末~09年初の「派遣村」で中核を担った法律家や労働組合員で作る。

 政府が東京都に協力を求めて現在、実施している「官製派遣村」は、住居を失い生活に困窮する労働者の相談に乗り切れていない、との指摘がある。

 「官製派遣村」となったオリンピック・センター(渋谷区)に入所する男性(37歳)は、「アルバイトのスタッフがマニュアルに沿って経歴などについて事情聴取するだけで、今後の生活再建については何ひとつ相談に乗ってもらえない」とブチまけた。

 「ワンストップの会」は昨年末から、「官製派遣村」の退去期限である1月4日以降の暮らしに不安を抱く入所者への相談会を開いてきた。1月1日からはオリンピック・センターの前に停めた観光バスの中で相談会を開こうとした(「ワンストップの会」は入場を認めてもらえないからだ)。

 だが、東京都の差し金を受けた警察から「駐車違反」と咎められたため、バスを走らせながらの相談会となった。都庁周辺を1時間弱かけて回る。この間に入所者の相談に乗る。

 バスに乗り込んだ入所者は、法律家や労働組合員と2人1組でシートに座った。昨年11月に勤めていた建築会社が倒産したという男性(40歳)は、失業保険をもらえなかったため、日雇いの仕事をしながらネットカフェに寝泊りしていた。12月25日から仕事がなくなり、29日から「官製派遣村」に。入所した時の持ち金は千円こっきりだった。

 退去する4日に即、日払いの仕事が見つからなければ、食事にもありつけず路上に寝なければならない。相談員は「先ず生活保護を受けること」を勧めた。男性はバスのシートに座ったまま生活保護の申請書類に記入した。生活保護申請は2日付けとなり、認められれば、同日に遡って支給される。

 定員27人のバスは、相談員と約20人の入所者で満杯になる。2日、バスは4巡(相談会は4回)したが、積み残された入所者が10人以上出た。

 「ワンストップの会」によると年末から2日までに379人の個別相談を受け、274人の生活保護を申請した。

 オリンピックセンターの「官製派遣村」には802人(2日正午現在)が入所している。手持ち金は皆無かほんのわずかという人がほとんどだ。先ずは生活保護を支給して、仕事を見つけてもらうのが妥当だろう。

 繰り返しになるが、深刻な不況にあえぐ現下のご時世で4日に即、日払いの仕事など見つかりっこない。見つかっても恐ろしく不安定で労働条件の劣悪な仕事だ。

 生活保護が必要な入所者には退去が翌日に迫る3日午後、申請先の福祉事務所が明らかにされる。あくまでも申請先の事務所だ。申請できるわけでも、認められるわけでもない。東京都は「ワンストップの会」の問い合わせに「4日以降放り出すということはしない」と答えたという。

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