「居ても立ってもいられなかった」 ― 20歳で徴兵され、前線には送られなかったものの軍隊経験のある村山元首相。20数年ぶりに国会前に立った心境をこう語った。
きょう午後6時30分頃、憲政記念館での講演を終えた元首相が国会前に到着すると、どよめきが起きた。元首相が木曜定例の抗議行動に参加し、マイクを握ったのである。(主催:総がかり行動実行委員会)
放列を敷くテレビカメラとスチールカメラは、危機に瀕する村山談話の行方を追っているのだろうか。
「国会は外も中も変わってません。しかし日本の政治は大きく変わろうとしています」。91歳とは思えないほど張りのある声で、元首相は政治観を示した。
憲法を勝手に破り戦争に突き進む現状に怒っているのだろう。村山氏は言葉を叩きつけるようにして演説した―
「昔は憲法改正を言ったら大臣もクビになってましたよ」
「日本は憲法があるから戦争は出来ないといって70年間平和を守ってきた。この憲法を変えることは絶対にいかん」。
村山氏の話に呼応して会場からは「そうだあ」の声があがり、拍手や鳴り物の音が響いた。
「国会の中が悪さをすれば、国民が潰してやるというくらいの気持ちで、主権者の国民がこの場に立ち上がって日本を守ろうじゃないか。(私は)あと何年生きるか知りませんが、この憲法を守るために命をかける」。
政治生活のほとんどが野党だった村山氏らしい気骨ある演説だった。元首相はこの後、参院会館で記者会見を持ち、次のように語った―
「村山談話は20年前、あんまり宣伝しなかった。僕自身も忘れてしまったよ。忘れたころ、目を覚まして問い直される。忘れていた過去の歴史を国民の皆さんに知ってもらういい機会だと思う。
これで日本国民全体が目覚めて、日本の国がどうあるべきか、どうすべきかをしっかり自覚してもらうことは大変大事」。
戦後70年目にして歴史の教訓が踏みつけにされようとしている。独善的なナショナリズムと自衛権の拡大がもたらした惨禍が、繰り返されるのだろうか。
「安保法制が可決成立すれば村山談話は事実上葬り去られたことになる」。元首相が言外に語っているようでならなかった。
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