「安倍首相に安保法制の審議を見直すように提言して頂きたい」。マスコミOBたちが歴代首相に要請することにした。賛同者は21日現在で50名。
OBたちは要請に先立ち、きょう、プレスセンターで記者会見した。むのたけじ氏(元朝日新聞)、澤地久枝氏(元中央公論)ら10人がスピーチした。
昨今のように権力とべったり慣れ合うのではなく、従順なふりをしながら権力と戦ってきた、気骨あるジャーナリストたちだ。
去る18日に全国一斉に行われた「アベ政治を許さない」の発起人である澤地久枝さんがマイクを握った―
「日本の市民の感覚が変わってきたと思う。安倍内閣がやっていることがあまりにも粗末で、みんなを舐めている。舐められていることに自覚する人が世代を超えて増えてきたと思う。
日本の世の中が変わって来た。この人達は次の戦争を何としても防ぎたい。わが子やわが孫が戦死することをぜったい許しがたいと思っている女の人、あるいは男の人たちが増えてきている・・・」。
澤地さんは、呼びかけ人に名前を連ねていた民放のキャスターが「降ろすぞ」と脅されて、呼びかけ人をやめたことを暴露した。
むのたけじ氏(100歳)の姿もあった。むの氏は記者として日本軍に従軍したが、戦後、責任を感じ新聞社を退社した。
「ほんとに情けないね!日本のジャーナリズムは・・・」。むの氏は、マスコミの無力さを慨嘆した。身をもって知る者の言葉は重い。
とても100歳とは思えない大きな声で むの氏 は続けた―
「昭和20年、8月12日(※注)にポツダム宣言受諾が日本の報道関係に知らされた。その日、号外を出すべきだった。どこもないね。せめて15日、天皇の放送の前に。
戦場でいかなることをやったか。その悪行に対する罪の償いを口先だけでなく、物も心もあらゆることを動員して詫びるということをするべきだったのに、それさえも全部連合軍にゆだねて、日本国民全体の自らの行動は一つもなかった。
この歴史の課題に対して、報道産業はすっかり自己規制してやるべきことを何にもやらなかった。この重い重い荷物を日本の報道産業は背負っている」。
戦争の悲惨さと報道の戦争責任を知る むの氏 のようなジャーナリストは、高齢で少なくなる一方だ。
かわってマスコミ界に君臨するのは安倍首相の「鮨友」「ゴルフ友」だ。
日本のジャーナリズムはまた同じ過ちを繰り返すのだろうか。
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(※注)
8月14日、御前会議でポツダム宣言受諾を決定。
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