今月2日にドンバス地方(ドネツク、ルガンスク)独自の議会選挙と首相選挙を決行し、意気あがる親露勢力。16日、筆者は彼らの支配地域に入った。
ドネツクの街は、まるで新国家が誕生したような熱気に満ちた大看板が溢れている。
「我々は我々の政府を作った」「我々の将来は我々が決める」「我々の軍隊は同胞のためにあり、独立のために戦う」・・・看板の絵柄は工場労働者や武装集団をフィーチャーしたものが目立つ。
親露勢力の動きに反発を強めるポロシェンコ大統領は15日、彼らが支配する地域での公共サービスを打ち切る大統領令を発布した。病院や学校などの運営が停まることになる。住民への影響は計りしれない。
ドネツク市内は街の中心部にも砲撃音が響く。着弾音ではない。親露勢力が西に向けて砲弾を撃つ音である。緊張は高まるばかりだ。
親露勢力、ウクライナ軍ともに おのずと チェックポイントでの検問は厳しくなる。
ウクライナ軍のチェックポイントでドライバーは携帯電話の着信履歴を調べられた。筆者はカメラの画像をチェックされた。
朝一番の仕事であるため、メモリーには一枚の写真も入っていない。撮影画像は夕べのうちにすべてPCに取り込むからだ。
それでもウクライナ軍兵士は「なぜ写真がないんだ?」と詰問してきた。
親露勢力の支配地域に入るとチェックポイントが短い間隔で置かれている。こちらも検問は厳しい。
途中、親露派民兵を取材車に乗せた。民兵はチェックポイントから基地まで移動するのに、ちゃっかり取材車を利用したのだ。
タクシー代のつもりなのか、民兵は自らの境遇と思いを語ってくれた―
「いつも砲撃に遭っている。犠牲になるのは市民だ。私の家族は難民となって(ロシアに)逃れた。とても淋しい。誰も戦争なんてしたくない。みんな平和を望んでいる・・・」。
意気軒高なのは両陣営の指導者とロシア、米国で、普通の人々は厳しい境遇に置かれているようだ。戦争の常である。
幹線道路から基地につながる道は着弾した穴が至る所にあった。侵攻に備えて幹線道路は狙わないようだ。
前出の親露派民兵によると、チェックポイント周辺は砲撃が頻繁にある、という。
ドライバーは「(親露勢力の支配地域を出るのが)あと一時間遅れていたら、砲撃に遭うところだった」と話す。
マリウポリに帰り着いた時、ドライバーは胸の前で十字を切った。