
池が枯れていると博物館の威厳も半減する。=13日、上野恩賜公園 撮影:田中龍作=
日比谷公園の悪夢が蘇った。田中は押っ取り刀で上野公園に駆け付けた。
東博の愛称で時代を超えて親しまれてきた東京国立博物館。明治5年=1872年創設。日本最古の博物館として150年以上にわたり上野恩賜公園にその存在を誇示してきた。
ところが、歴史的景観を破壊する愚挙が強行されようとしている。本館前庭の池を潰して芝生広場に改修する、というのだ。
日本最古の西洋式庭園である日比谷公園のリニューアルと瓜二つではないか。
東博のプレスリリースを見ると「(芝生広場にした)前庭を活用してイベントやビアガーデンを開催することで、新たな東京国立博物館の魅力を発信していきます」とある。
田中は噴き出してしまった。文科省事務次官を務めた経験のある藤原誠・東博館長が発表したリリースとは思えない。あまりに軽佻浮薄なカネ儲け主義である。

表慶館無残なり。時の皇太子(後の大正天皇)のご成婚を記念して明治42年(1909年)に開館した日本初の美術館も、前庭の池に水がないと実にみすぼらしい。=13日、上野恩賜公園 撮影:田中龍作=
元文科事務次官の前川喜平氏は自らのX(旧ツイッター)で、以下のように述べ事態を憂えている。
「優れた美術品を鑑賞し、日本の歴史に思いを馳せて、豊饒な気持ちになったあとは、静謐な空間でその余韻に浸りたい。外に出たら遊園地みたいな空間だったら、すべてが台無しになる」。
知人の建築ジャーナリストは「JR上野駅を中心にした再開発計画があり、東博も組み込まれているのでしょう」と見る。日比谷公園のようにあのデベロッパーが暗躍しているのだろうか。
田中が訪れると、本館前庭の池の水は抜かれていた。現場の係員によると、「水はかれこれ一年前から抜かれている」という。
いきなり満々と水を湛えた池がなくなると反響が大きいため、来館者には「池のない前庭」で目を慣らしてもらおう、という魂胆だろうか。悪辣である。
芝生広場の完成予定は2027年3月(東博プレスリリース)。

美術品を鑑賞した後、目の前でイベントが繰り広げられていたら余韻に浸ることもできないだろう。=13日、上野恩賜公園 撮影:田中龍作=
~終わり~
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