取材は今年3月。日本は戦争をやっているわけではない。人々は勤勉だ。なぜここまで貧しくなったのか
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〆切時刻は夕方6時。残り10分を切る頃になると次から次へと人が駆け込んでくる。
毎月第2・4土曜日にNPO法人TENOHASIが東池袋公園で主催する炊き出しでの光景である。
中高年が多いが青年も珍しくない。手にした小ぶりのバッグからは、彼らがアパートか都営住宅暮らしであることがわかる。野宿者やネカフェ暮らしであれば、手にしているのがキャリーだとか大きなリュックだったりするからだ。
勤め帰りも少なくない。夕方5時に仕事を終え駆け込んでくるのだろうか。30代の正社員も炊き出しに並ぶようになった。手取り17万円。家賃と光熱費を払うと食べて行くのが難しい。
誰が彼らを食えなくしちゃったんだ?・・・と思うと涙が出た。政治への怒りがこみ上げてきた。
最大の原因は労働法制の緩和である。下手人は竹中平蔵と経団連だ。
労働者派遣法を改悪し、安価な賃金で雇用でき、不要になればいつでも切り捨てられるようにしたのである。
不安定な非正規雇用は2124万人。労働者全体の37%を占める(総務省調べ・2023年)に至った。
働く能力と意欲があっても雇用がなければ、人は食べてゆけない。職に就けても過酷なパワハラに遭う。
正社員でも食べてゆけない。非正規はなおさら。無職ともなれば食べてゆくのは至難の業だ。
2~3日食事にありついていない男性(46歳)が杉並区高円寺のコンビニで店員に「もう限界なんです。おカネを出して下さい」と言って包丁を向ける事件があった。24日のことである。
何も奪えず誰も傷つけなかった男性は強盗未遂で警察に逮捕された。
今や1日3食必ず提供される留置場や刑務所は「最後のセーフティーネット」と言われるようになった。男性が食事にありついたことだけは事実だ。
食べたさで犯罪を犯すケースが後を絶たない。盗んだ自転車を持って交番に自首したり、殺人犯の家に落書きをしたり、と。
主催者が用意した弁当500食は、わずか20分余りではけた。来場者は534人。不足分の34食はビリヤニ(インドの炊き込み御飯)などで対応した。
~終わり~