食料品の値上げが続いている。スーパーの値札が昨日より50円上がっていたなんてざらだ。
燃料費の高騰、戦争の影響・・・理由は様々だが、昨今のメーカー値上げと関係ないところで高騰しているものがある。
ポーク缶。豚肉ミンチを加熱した肉の缶詰で、沖縄料理が広く紹介されるまでは「ランチョンミート」と呼ばれていた。主に流通しているのは輸入品だ。
中には日本製のポーク缶もある。沖縄料理店で出されるゴーヤチャンプルーに欠かせないこのポーク缶が一部異常な値上がりとなっている。
沖縄で製造されている「わしたポーク」がそれだ。沖縄県物産公社製造。沖縄産の豚肉と鶏肉を原料とし、沖縄産黒糖を使って味付けし、添加物を加えない製法で作られている。
昨年から品薄が噂されていたが人気過熱で製造中止となった。3月に製造再開されたが、ネット市場に出回っているものは転売ヤーによって値段が釣り上げられているままだ。
その価格、なんと200グラム缶が1,682円から。製造元のホームページを見ると定価は550円だ。約3倍以上である。
なぜこんな事態が起きているのか。
ネットで囁かれているのは、食料危機に対する不安が原因だ。今のうちに安全安心な食品を買っておきたいという人々が集中して引き起こした、ある種の買い占めだという説である。
買い占めの動きがあると、転売ヤーが察知して普通の人々が購入する前に品物を押さえ、高値で売る。マスクやトイレットペーパー騒動の時のようなものだ。
沖縄物産館「わしたショップ」を覗いてみると、件のわしたポークはちゃんとあった。輸入ポーク缶と同じ棚に20個ほど置かれている。「お一人様2個まで」と書かれた札がかかっていた。
店に聞くと、「毎月入荷がされるようになったが、原料が限られているので多くは作れない。今日は2個まで、また来て頂ければ」と節度ある買い方を呼びかけた。
安心な国産原料で作られたランチョンミートを探す母親の足元を見るような転売ヤーもさることながら、転売と分かっていても高額で購入する消費者がいるのはやるせない。
何よりつらいのは、沖縄県民が自分のところで作っていながら手に入らないことだ。わしたポークの「わした」とは沖縄の言葉で「私たち」という意味である。
繰り返すが、転売ヤーが跋扈するのは、品薄と社会不安が引き金となっているからだ。
業界は「安心安全な食品が求められている」ことを認識すべきなのだ。
~終わり~