「日本には高価なミサイルを撃ち込む必要もないよ」。独裁者の高笑いが聞こえるようだ。
日本ほど侵略しやすい国はない。先制攻撃に対する猛反撃などするまでもなく滅ぼすことができるからだ。
一部の国会議員、インテリ、メディア関係者が、プロパガンダに容易く乗せられる。
パニックを伴う騒乱状態に陥った際、特定の国の諜報機関が「某国はアメリカから日本を解放してくれるよ~」といったガセ情報を流せば、一発でこの国は真っ二つになるだろう。
田中はロシアのクリミア侵攻、ドンバス戦争(ともに2014年~)、そして今回のウクライナ本土への侵攻を現地で取材してきた。
現実を知る者にしてみれば、ロシアのプロパガンダは実に分かりやすい。
《ネオナチ?》
二言目に「ネオナチ」なる言葉が出てくるが、ウクライナは第2次世界大戦中、ナチスドイツから散々な目に遭っている。
大勢の女性たちが列車に乗せられてドイツに連行され、奴隷同然の扱いを受けた。内容は詳述するまでもないだろう。田中が生き残りの老婆から直接聞いた話である。
ゼレンスキー大統領自身ユダヤ系である。どうしてネオナチ政権なのだろうか。親露派のインテリに教えてほしいくらいである。
第2次世界大戦当時、ナチスに協力した人士も一部にいたが、戦後70年以上経って「ネオナチ政権」と称されるほどの勢力ではない。
《NATOの東方拡大?》
1989年2月、モスクワを訪れたベーカー米国務長官とゴルバチョフ書記長との会談の中で出てきた話を、ロシアが都合のいいようにウソでネジ曲げただけのことである。
内容はこうだ―
ソ連圏の崩壊が始まるなか、東西ドイツの統一は避けて通れない問題となっていた。
「統一ドイツ」の軍事的地位をどうするか。ベーカーが提起する。
「統一後のドイツを(当時の西ドイツに駐留する)NATOの枠組みの中に留めておくか」それとも「(NATOにも加盟させず)独立した存在にしておくか」。
ゴルバチョフはその場で回答しなかったとされる。ドイツを軍事同盟に加盟させず独立した存在にすれば、強大化することは第2次世界大戦の惨禍が教えるところだ。
プーチンが唱えるように「NATOは東方拡大しない」などとベーカーは言ってないのだ。
いずれにせよ、そしてあくまでも統一後のドイツの中での話なのである。
もう一つ、重要な点がある。NATOは全会一致でなければ加盟できない。米国の陰謀論でどうにかなる案件ではないのだ。
全会一致ということは、ロシアへの脅威から身を守るために結束するということの現れである。
《クーデター?》
エマニュエル・トッドなる歴史学者のインチキ本『第三次世界大戦はもう始まっている』(自著)の中に、親露派ヤヌコビッチ大統領はクーデターで政権の座を追われた、とする趣旨の著述がある。
これも真っ赤なウソ。田中は現場で聞いたが、確かにアメリカからデモの市民に日当が出ていた。
だが、治安部隊は最後まで大統領側に付いていてデモの市民を射殺していたのである。射殺しても射殺してもデモ隊の闘争力が勝った結果、ヤヌコビッチは遁走したのである。
ロシアのプロパガンダに染まり、それをさも真実であるかのように吹聴する・・・日本の一部国会議員、インテリ、ジャーナリストを自称するコメンテーターに共通するのは、現場を一ミリも見ていないことだ。
現場を見ると論理構成が崩れるからだろう。ロシアのプロパガンダがデッチあげであることの証左である。
~終わり~
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読者の皆様。
日本は戦争をする国になるとならざるに拘わらず、侵略されます。国会議員やインテリが子供騙しのプロパガンダを信じ込む国は日本をおいて他にありません。
田中がウソを指摘できるのは、皆様の御蔭で現場を踏めるからです。家族や同胞を侵略から守るためにも田中龍作に紛争地取材を続けさせて下さい。 ↓