開戦から56日目、4月22日。
今回の戦争で「非はウクライナにある」とする人達の論拠は―
ドンバス地方でウクライナ側がロシア系住民を虐殺した、それは国際機関の調査でも明らかだ・・・とするものだ。
「ウクライナ=善」「ロシア=悪」の二元論に立つ訳ではないが、「非はウクライナにある」とする説には決定的な要素が欠落している。
ドンバス戦争はロシアによるクリミア半島への軍事侵攻(2014年)を受けて始まったのだ。
当時、現地で侵攻の一部始終を見ていた身として言わせてもらえば、ロシアがクリミア半島のウクライナ軍基地をすべて攻略し終えたのが4月初旬。ドンバス戦争は4月7日開戦だ。
ドンバス戦争はクリミア侵攻が終わるか終わらないかのうちに始まったのである。
クリミア侵攻は国際法違反にあたる武力による奪取だった。これを抜きにしてドンバス戦争は語れないのだ。
喧嘩を裁く時に問われる「どちらが先に手をだしたのか」で言えば、ロシアである。
ドンバス地方(ドネツク州、ルハンスク州)のロシア系住民に年金が払われないなどの虐待がある・・・も巧妙なプロパガンダである。
住民はマリウポリ(ドネツク州)の社会保険事務所に行けば年金がもらえたのだ。私は写真も撮り住民から話を聞いている。
ドンバス地方は親露派勢力に実効支配され役所も押さえられている。政府が年金を送れば親露派勢力の資金源にされるだけだ。そのためマリウポリまで行くようにさせたのである。
ドンバス戦争が始まって間もない頃、私はドネツクで親露派民兵を取材車に乗せた。民兵はタクシー代と思ったのだろうか、心情を吐露してくれた。
「いつも砲撃に遭っている。私の家族は難民となって(ロシアに)逃れた。とても淋しい。誰も戦争なんてしたくない。みんな平和を望んでいる」。
意気軒高で好戦的なのは、権力者たちとその取り巻きだけなのだ。戦争の常である。
治安の悪化したドンバスに行くと誘拐される、という刷り込みもあり、ジャーナリストの足が遠のいた。
ドンバス地方はブラックボックスになったのである。プロパガンダのし放題になった。
~終わり~
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