弾圧は想像以上の早さでやってくる。周庭さんが来日し、明治大学で講演したのが2019年6月12日だった。
学生であふれ教室に入りきれないほどだった。日本の学生を相手に周庭さんは送中条例の危険性を訴え、「施行させないような運動をしている」と話していたという。
これが最後の来日となろうとは、本人はじめ誰も夢想だにしていなかった。
それから9日後の6月21日、学生や市民数万人が香港警察本部を包囲した。周庭さんはこのデモを扇動したとして逮捕される。8月30日のことだ。
起訴され裁判に掛けられることになった周庭さんは出国禁止となる。昨年12月あるいは1月に来日を予定していたが、それも不可能になった。
昨年12月19日、立憲民主党・国際局長の亀井亜紀子議員は情勢視察のため香港を訪れた。周庭さんと立法会の会議室で面談した。
周庭さんは立法会議員で民主派の區諾軒氏の秘書を務めていたが、區氏は議員資格を剥奪された。彼女は亀井議員に「日本に留学したい。仕事なくなっちゃたし」と語ったという。
それから約8か月後の8月10日、周庭さんは国家安全法違反の容疑で逮捕される。「勾結外國勢力(外国勢力)と結託した」というのだ。
昨年6月にあった警察本部包囲で周庭さんはデモ扇動罪に問われており有罪判決が出ているが、量刑は今年の12月にも言い渡される。
前の事件で判決が充分に言い渡されていないうちに、次の事件で逮捕される。それも今年6月末に新設されたばかりの国家安全法違反で。
11日夜、保釈された周庭さんは「心の準備ができていないうちに逮捕された。これまで4回逮捕されたが、今回が一番怖かった。一番きつかった」と語った。
弾圧は思いもよらぬスピードで、これでもか、これでもか、と押し寄せてくる。きょうの香港は、明日の台湾、明後日の日本。対岸の火事ではない。
~終わり~