裁判所が警察の隷属機関であることを端的に示した裁判の控訴審は、1回目の弁論でいきなり結審した。裁判所のやる気のなさの表れと言えよう。
もんじゅ西村裁判は、高速増殖炉もんじゅで起きたナトリウム漏れ事故(1995年末)をめぐって怪死した動燃総務部次長の妻が、「夫の遺品を返せ」と訴えている裁判だ。
ナトリウム漏れ事故のビデオを動燃が隠していたことが発覚し、西村成生・総務部次長はマスコミ対応に追われていた。事故発生から40日後の1996年1月、西村次長は怪死を遂げる。
警察発表によると、西村氏は宿泊先のホテル(東京都中央区)の非常階段から飛び降り自殺した、とされた。
病院の霊安室で変わり果てた夫と対面した妻のトシ子さんは、遺体が小さなアザだらけであることに強い疑問を抱いた。
8階(高さ30m)から飛び降り自殺したのであれば、頭がい骨が陥没したり、足を複雑骨折したりしているはずである。それらは全くなく、体が一回り大きく膨れあがっていた。
西村次長はド突き回されて遺書を書かせられたのだろうか。
警察(警視庁中央署)の事件処理は不自然を極めた。現場の実況検分の写真もない。何より西村次長の遺品の一部を家族に返さないのである。
妻のトシ子さんは警察を相手どって「夫の遺品を返せ」と訴えてきた。遺品とは着衣、靴、手帳、動燃から送られてきたFAXなどだ。
一審(東京地裁)は、中央警察署は遺品を占有していないなどとして、原告の訴えを却下した。
西村次長がド突き回されたのであれば、着衣には形跡が残っている。警察は事件の真相を闇に閉じ込めておきたい。東京地裁は結果として警察の望みにかなった判決を言い渡した。
きょう東京高裁で開かれた控訴審の第1回口頭弁論で、原告側は、動燃の大畑宏之理事の証人申請をした。大畑理事は、西村次長と同じホテルに宿泊したとされ、遺体の第一発見者でもある。
大畑理事は未返却の手帳の行方をよく知る。遺品の手帳2冊のうち、1996年の手帳は返ってきたが、事故発生当時の秘密がびっしりと綴られた1995年の手帳は未返却だ。
だが永野厚郎裁判長は大畑理事の証人申請を却下し、控訴審の結審を告げた。1回目でいきなり結審だ。審理の必要なしというわけである。
最高裁で判決が確定すれば、「遺体を雄弁に物語る着衣」と「事故当時の実情を記した手帳」は、警察から外に出ることはない。
「夫の遺品を返してほしい」・・・妻としてごく自然な訴えさえも斥ける。この国の司法は権力犯罪の隠蔽を正当化する機関に堕してしまった。
官邸の下足番と化したマスコミは、田中が見る限り1社も取材に来ていなかった。
~終わり~
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